2013年4月30日火曜日

新しい靴のたとえ

先日やった継続教育の資料のなかで、新規に始める避妊薬の副作用について、真新しい靴に例えて患者さんに話す方法を Susan Wysockiさんが紹介していて、おおいに納得しました。

患者さんは、ホルモン系の避妊薬開始後初期におこる副作用のことを、この先もずっと続く副作用と勘違いしてしまい、数日ないし数週間のうちに使用を中止してしまうことも稀ではありません。新しい靴を買ったとき、最初はマメができたり痛くなったりするけれど、だんだん慣れて今までになく快適な靴になったりするのと同じように、ホルモン系の避妊薬も最初慣れるまでに少し時間がかかることもある、ということを見事に説明されています。原文を引用します。

(ここから引用)
Women will sometimes think that the side effects in the beginning of hormonal con- traception will never go away. I use an analogy to describe the “break in” period as being similar to when you buy a new pair of shoes: Oftentimes you’ll have blisters and soreness or other discomfort. But after a period of adjustment, they might be the most comfortable shoes you’ve ever worn. The only ex- ception to this analogy is with hormonal implants, where bleeding waning over time is not predictable for an individual woman. 
(引用ここまで)

この継続教育の資料はNPWH.org 上のProfessional Education 中にあります。https://npwhcourses.globalclassroom.us/stratus/course/view.php?id=11&
資料のタイトル:Updates in Contraception: Issues of Patient Adherence and Need for Emergency Contraception, Part One: Practical pearls to improve patient adherence to contraceptive agents

2013年4月29日月曜日

コンピュータに文章を音読させる機能

友達のAさんがMacに文章を音読させる機能を教えてくれた。知っている人にはなんちゅうことはないと思うが、知らなかった私にとっては大発見! 同様の機能はWindowsにもあるようだ。

男性・女性各数人のナレーターの中から自分の好きな声を選べる。音読の早さを変えることもできる。

1日中電子カルテと格闘して、そのあと夜に英語の文章を読まないといけないようなとき(日本語はまだ絵みたいに眺められるけどアルファベットはそれが出来ん)、ショボショボの目でスクリーンの字を追うよりも、目を閉じて耳を傾けるほうがずっと楽に思える。ただし、ナレーターは読み方を間違えたりすることもあるので、おおらかな気分で利用されたし。


2013年4月28日日曜日

抗生剤無料プログラム中止の痛手

地元の某G スーパーの薬局に、無料(ただし処方箋は必要)の抗生物質がいくつかあった。特に健康保険のない患者さんにとって、たとえば膀胱炎の治療に使えるSMP/TMP DSあるいはciprofloxacinが無料になるのは極めて魅力的だった。またクラミジア感染症に使えるdoxycycline もこの無料プログラムの対象になっていて、とても重宝していた。しかし、このプログラムがいつの間にか中止になってしまっていた。

先に挙げたSMP/TPM DSや ciprofloxacin は$4 プログラムに移行したので、まだ安い。けれども、doxycyclineが一気に50 ドル以上に値上がりしてしまったのは非常に痛い。doxycycline は供給不足の問題がこのところ深刻だったのだが、供給が改善し始めたと思ったら、この事態である。

健康保険のある患者さんがクラミジア感染症にかかっている場合は、azithromycin というたった1回飲めばいい薬をなるべく処方しているが、無保険の患者さんには無料のdoxycycline (1日2回 7日間飲まないといけないが)が頼みとするところだった。

残された拠り所は、郡の保健所から支給される性感染症治療薬である。ただしこれも一クセあって、追加を依頼してもなかなかすぐ薬が来なかったり、使用期限まで間近な薬が多いので日切れに気を払わないといけなかったりする。

2013年4月27日土曜日

とまとまん来米キャンセルの巻

木曜日の午後から1週間あまりの間  とまとまんが来Pghするはずだったが、急遽取りやめになってしまった。仕方ないさ、とさくさくと気分を切り替えたつもりだったけど、今朝ヨガの教室のまっ最中に涙がしばらく止まらなかった。

きっかけは、先生が言った "We do yoga for good health and happiness." (私たちがヨガをするのは健康と幸せのためです。)といういつもの一言であった。

「私の大好きなこのヨガ教室をとまとまんにも体験してほしかったんだよなぁ。」と思ったら涙がでてきちゃって、

「とまとまんにNorth Park に植えてきた桜の生長を見てほしかったんだよなぁ。」
「次にとまとまんが来たら一緒に行こうと思っていた所があったんだよなぁ。」
などいろんな思いが続いてどんどん出てきてしまった。

自分が思っていた以上に、自分の心は我慢していたのかも、と思った。年末までは2−3ヶ月おきに会えていたけど、今回は正月以来、じつに約5ヶ月ぶりとなるはずだった。

それでも、ヨガ教室に行ったのはよかった。 chair pose (空中椅子に座るかっこう)のときに歌を歌う(その日の気分でリーダー格の参加者の人が選ぶ)のだが、今日は  Oh, What a Beautiful Mornin' というミュージカル『オクラホマ!』の1曲で、今日の天気にぴったり、かつ自分のよく知っている歌だった。

帰ってきてお昼ご飯を食べながらためていた新聞(といっても、木・日だけの購読)にバングラデシュのビル崩壊や中国の大地震の記事を見て、家族や友人を失った人たちと比べたら、自分はなんて恵まれていると思わないかんな、と思った。

それから、蘭の鉢の土を入れ替えた。生長が著しい株は、2鉢に分けた。いま全部で5鉢。

これから料理をたんまり作る。

2013年4月25日木曜日

PLAYAWAY というシステム

地元の図書館で、PLAYAWAY というシステムのオーディオブックを借りて聞いている。タバコの箱より小さいくらいの品で、単4電池とイアフォンを差し込んで再生する。言葉で説明するのはむずかしいので、よかったらこちらのページをご覧くだされ。
http://my.playaway.com/playaway/
朗読のスピードを変えることも出来る。

これまでのところ、私の一番のお気に入りは、
Thich Nhat Hanh の The Art of Mindful Living。 これは本の朗読ではなく、Thich Nhat Hanh 自身による講演のダイジェスト版である。
http://library.playaway.com/art-of-mindful-living-the.html

聞きながら走ったり、掃除したり、料理したりしている。

2013年4月24日水曜日

フルマラソン出場権獲得

5月5日のピッツバーグ・マラソンのフルマラソン出場権を正式にトランスファーしてくれる人を見つけた。私は主催者に参加費120ドル(早く申し込めばもっともっと安かったんだけど)を払う。参加予定だったKさんがトランスファー代30ドルを払ってくれる。そしてKさんの参加費は大会主催者から返金される。

去年初めてハーフマラソンをやったが、フルマラソンは初めてだ。目標はもちろん完走すること。

2013年4月23日火曜日

天井のすみから見守るもう一人の自分

この1年、電子カルテに大いに苦しんできた。そういうなかで体裁的また本質的な医療の「質」について否応なしに考えさせられてきた。現状はさしてよくなっていない。むしろ日々の課題はより過酷になっている部分もある。自分自身の最大限のがんばりを発揮してもなおどうにもならないことがたくさんある。

けれど、この1年の「修行」のなかで、悲惨な状況にあってもそれに振り回されすぎない肝がすわってきたように思う。決してさじを投げ切ったわけではないのだが、まっとうなことと無茶苦茶なことをそのままそっと見つめることが前より出来るようになった気がする。言いかえれば、問題の渦中にいながらにして、天井のすみからもう一人の自分が部屋全体を見守っている感じ。まるで映画のシーンのように。

ヨガとかmeditation をしてきた効果か。



2013年4月22日月曜日

チューリップの花

週末、ペンシルバニア州北東部に住む友達Aさんの家に2泊してきた。片道5時間。

Aさんは研究者として活躍していたが、多発性硬化症の療養のため今年1月にピッツバーグのアパートから実家に引っ越した。

Aさんは強い疲労感でなかなか思うようにやりたいことができないジレンマにさいなまれつつ、去年の秋にチューリップの球根をたくさん植えていた。私が今回行ったときには、まだチューリップの花は開いていなかったけれど(ピッツバーグのチューリップは咲いている)、つぼみがふくれてきていた。チューリップの成長をいっしょに楽しむことができてとてもよかった。今度はイチゴやブルーベリーを育てるんだといって、Aさんは張り切っている。自分の体とまっとうに付き合っているAさんの姿に頭が下がる。

Aさんの家は農家で、夏はトウモロコシを育てているほか、羊をたくさん飼っている。Aさんの両親も犬もみんないい人たちだ。




2013年4月16日火曜日

閉経後の膣萎縮や性交痛に対する新薬

米国食品医薬品局は2月、閉経による膣・外陰部の萎縮の症状の一つである性交痛を適応とする薬、Osphena (一般名ospemifene)を認可した。
ロイター社の記事:http://www.reuters.com/article/2013/02/26/us-shionogi-drugapproval-idUSBRE91P0UR20130226


これまで非薬物療法(オリーブオイル、膣用保湿剤など)で十分な効果が得られない膣萎縮症に対しては、エストロゲン(女性ホルモン)を使うのが一般的であった。ジェル、クリーム、リング、錠剤などのエストロゲン剤を膣に局所的に利用する。とてもよく効く。


今回の薬ospemifeneの特徴は、エストロゲンではなく、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM = selective estrogen receptor modulator) であるという点が変わっている。つまり薬自体はエストロゲンでないけれど、エストロゲン受容体を刺激することであたかもエストロゲンを投与しているのと似たような効果を出すというわけだ。


「選択的」というのは、全身のあちこちにあるエストロゲン受容体のうち、ある臓器の受容体には積極的に作用して、また別の臓器には作用しない、という、いわば「好き嫌い」のあるようすを示している。


この薬は日本の塩野義製薬の米国子会社 Shionogi Inc.によって作られている。


先月26日には、ヨーロッパ医薬品庁も、この薬の販売承認申請を受理したとのこと。こちらの適応は閉経後膣萎縮症に対する薬として。
塩野義製薬ウェブサイトより:http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/130327.pdf


感想:

  • 膣萎縮症の対応策がひとつ増えたことはいいことだと思う。
    非薬物療法(オリーブオイルや膣用保湿剤)、従来からあるエストロゲン製剤とならんで、第3の選択肢になるかな。
  • SERMの特徴を利用しているところがとても興味深い。
  • 乳がんの既往のある人は使うべきでない、と添付文書にある。まだこの点において十分な研究がないのだから仕方ないとは思う。が、一番この薬に興味を持つのは、estrogen-dependant ながんの既往のある人でないだろうか。SERMならではの特徴を今後の研究に期待したい。
  • 使用にあたっては、血栓症や子宮体がんのリスク、ほてりなどの副作用をよく知って、吟味しておきたい。エストロゲン療法と同様に丁寧なカウンセリングは必須とおもう。
  • 親会社の塩野義製薬は日本の会社だが、日本を飛び越して米国と欧州に先にアプローチしている。日本女性はほっとかれちゃった? 日本にも膣萎縮症に悩む人は少なくないと思う。話題にしにくいことだけに、ひっそりと耐えている女性が多いかもしれない。
  • 膣萎縮症の辛さは性交痛だけの問題ではないところを忘れてはいけないとおもう。デリケートな場所の皮膚の乾燥、弾力性の低下は、ひどい痒みや不快感、また膀胱炎の頻発にもつながる。更年期症状のうち、ほてりや発汗という症状は数ヶ月から数年でだんだん落ち着くことが多いのに対し、膣萎縮症はほっておいてよくなるということはあまりない。個人差は大きいが、年齢とともにだんだん進行することも多い。生活の質にとても影響するので、これからの高齢社会のなかでますます大事な領域だとおもう。
この記事を書くにあたって参考にしたウェブサイト
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm341128.htmhttp://www.osphena.comhttp://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/120628.pdf


追記: 2013年6月17日に関連記事を書きました。
こちらです。http://koimokko.blogspot.jp/2013/06/blog-post_17.html

2013年4月15日月曜日

新しく認可された「つわり」の薬

米国食品医薬品局は、妊娠中の嘔気・嘔吐に対する薬 Diclegis を先週認可した。発売は来月下旬予定とのこと。従来から推奨されているように、食事を少量ずつ何回にも分けてとるとか、強いにおいのする食品を避けるとか、消化のよいものを食べる、などといった食事・生活の工夫をしても嘔気嘔吐症状が改善しない妊婦さんがこの薬の対象者。

「つわり」が重症化して、点滴で補液するなどの医学的介入が必要になった状態を「重症妊娠悪阻」というのだが、この薬はそこまで至っていない生理的な嘔気・嘔吐症状のある妊婦さんを対象としているところが興味深い。(幅広いマーケットだなぁ。)もっとも、嘔気嘔吐が強いときにゃ薬を飲むことも困難であるから、この薬を飲める、かつ飲んだ後すぐ吐かない患者さんはまだ比較的軽症といえる。

Diclegisの成分はpyridoxine (ビタミンB6) とdoxylamine (抗ヒスタミン剤)である。合剤にして、またゆっくりと体に吸収されるように製剤したところが強みだとのことである。

実はこの薬、米国内ではBendictin という商品名で1980年台まで販売されていたが、胎児奇形の原因になるという「うわさ」が増えて、販売会社が自主的に販売を中止していた。(後に胎児奇形のリスクは否定された。)米国外ではその後も一般的に使われていたり、また米国内でもpyridoxine と doxylamine 各単剤を処方してそれらを同時に使っていたりで、新薬というほどのものではない。

Pregnancy category (妊娠時の使用における安全性を示す分類)は "A" に分類されている。Pregnancy Category A とは、適切かつ対照のある研究において、妊娠第一期(妊娠12週まで)およびそれ以降において胎児に対する危険度は見つかっていない、安全度としては最高のカテゴリー。

注意点としては、doxylamine は抗ヒスタミン剤ーーいわゆる乗り物酔いの薬と同様に眠気を催すので、この薬を使用しているときは車やその他の機械モノの運転は避けなくてはいけないということ。

参考ウェブサイト:

2013年4月14日日曜日

10代の子どもを持つ親がその子どもの予防注射を避ける理由

興味深い記事を紹介したい。

論文タイトル Reason for Not Vaccinating Adolescents: National Immunization Survey of Teens,  2008-2010
(小芋訳:思春期の子どもに予防注射を受けさせない理由:全国10代予防注射調査から 2008-20010年)
http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2013/03/12/peds.2012-2384.full.pdf+html

10代の子どもを持つ親が、子どもに予防注射を受けさせない理由について調べた調査。HPVワクチンを受けさせない理由がTdap (破傷風、ジフテリア、百日咳)やMCV4(髄膜炎菌4価ワクチン)を受けさせない理由と違う傾向があることをこの論文は指摘している。

HPVワクチンを受けさせない理由として「子どもが性行動をしていないから」というのと「安全性の心配、副作用」というのが目立って多かった。

懸念すべきは、HPVワクチンを受けさせるつもりはない、という親がこの調査期間2008年から2010年の間に39.8%から43.9%に増えているという点。

診療する側は以前にも増してワクチン接種を推奨しているにもかかわらず、HPVワクチンに関しては受けさせるつもりがない親が増えているということは、単に推奨するだけのアプローチではあかんのと違うか、とこの論文は話を締めくくっている。

患者さんを診ていると、「HPVワクチン? そんなん何年も前にとっくにやったよ。」という患者さんが徐々に増えつつある一方、「母は受けなくていいといったので、受けなかった。」とか「まだ新しくて不安です。」と言う患者さんも依然多い。短い診察時間の中で、HPVワクチンを進めるのは大変。

2013年4月12日金曜日

ヨガの先生の80歳の誕生日

先日のこと、ヨガの先生の誕生日を祝う機会があった。70歳代かなぁ、と思っていたら、なんと80歳とのことで たまげた。

生徒(老若男女、人種もさまざま)のうち有志が、食べ物・飲み物・花・横断幕を持ち寄り、ベリーダンスやスペイン語の歌の披露もあって、にぎやかなお祝いとなった。

先生はWe do yoga for good health and happiness. といいながら、あっはははとよく笑い、飛びきりの笑顔をいつも振る舞ってくれるとてもとてもすてきな方だ。

私にとって、先生の存在はむちゃ大きい。60歳代くらいの人にとっても、先生の存在はとても大きな励みらしい。


子宮頚がん検査異常時の新ガイドライン

恥ずかしながら、このところ学会誌関係はなかなかめくれてもなくて積み重なる一方だったが、今回子宮頚がん検査異常時の対応のための新しいガイドラインが出たので、これは絶対読まなければ、と気合いを入れて読んだ。
オンラインではこちら。
http://www.asccp.org/Portals/9/docs/ASCCP%20Updated%20Guidelines%20%20-%203.21.13.pdf

感想:研究の成果を反映したガイドラインになっている、が、おかげで(そのせいで?)ますます複雑になってしまったような気がしないでもない。もはやこれは「覚える」たぐいのものではない。フローチャートが単なる機械的な虎の巻ではなくて、自分のなかで意味のある情報となるように、また別の日に読み直そう。一回読んだだけでは血にも肉にもならんかった。

2013年4月10日水曜日

階段昇り降りの効果

ピッツバーグ大学の42階建ての塔、Cathedral of Learning の36階まで階段で登った話を前に書いた。http://koimokko.blogspot.com/2013/02/cathedral-of-learning.html

夕暮れ時でも照明のおかげで明るく、何より暖房完備である環境が気に入ってしまい、その後週に1−2回行っている。

最初は1往復しかしなかったが、その後はだいたい2往復。私の足だと30−40分で2往復可能。一回だけ3往復したこともあったが、それは1時間ちょっとかかった。暖房のおかげですぐ汗をかけるので、たった30−40分の運動でも、まるでものすごく運動したかのような達成感が得られてよろしい。

急に暖かくなったので、外をひさびさに走ってみた。かなり快適に走れたのでびっくり。階段昇降の効果は大きいとみえる。

ちなみに階段の壁には、免責事項がちゃんと掲示してある。「そもそも階段は運動をするところじゃありません。ケガしても自己責任ですよ。」というような。そんな掲示にもめげない(?)階段愛好者は結構多く、いつ行っても必ずや何人かに出会う。すごいひとだと、巨大なバックパックを背負って負荷をかけている。学生風の人だけでなく、年配の人も少なくない。

2013年4月9日火曜日

指を切った。しかも2回。

1月のある朝、アボカドの種を取り除こうとしていたときに手が滑って、人差し指の根元の方をぐっさり切った。1.5cm 幅で、しかもかなり深かったのだが、馬鹿なことに、絆創膏とディスポーザブルの手袋だけで仕事が終わるまで耐えてしまった。仕事が終わってから、urgent care タイプのクリニックに行って、ナースプラクティショナーに縫合してもらった。(生涯ではじめて受けた縫合)

urgent care というのは、予約なしで飛び込みで行けるタイプの診療所で、ここ数年で増えてきている。私のようなケガに限らず、急病全般に幅広く対応している。命に関わるような、あるいは一秒一刻を争うような状況のときはER(救急救命外来)に行くべきだが、そこまでではない、かといって悠長に予約をとって何日も先の受診日を待っている場合じゃないようなときに、urgent care が活躍するわけ。私の健康保険の場合、ER受診にはなにはなくとも120ドルほどのco-pay(自己負担金)がいるが、urgent care だ30ドルで済む。

破傷風の予防注射から 6年近くたっていたので、(まあそれでも10年以内であるので問題ないと言えば問題ないのだが)だんだん心配になって、縫合から1週間後にTdap (破傷風、ジフテリア、百日咳の混合ワクチン)を受けた。このときはphysician assistant が見てくれた。傷の色が非常に悪かったので、それを診てもらえたのもよかった。

この事件のあと、とまとまんがAmazonでセラミックの包丁を買ってくれて、それを気をつけて使っていた。が、2ヶ月とたたないうちにまた似たような場所をぐっさり切ってしまった。で、今度はいさぎよく、前回と同じクリニックにすぐ行った。

同じ PA にまた会い、「あなたはもう刃物を持っちゃいかんわ。」と言われながら縫ってもらった。

洗浄やら縫合には結構時間がかかるので、作業してくれている担当のNP や PA に仕事はどう?とか、一日何人診るの? 学校はどこに行ったの?で、どうだった? とかいろいろなことを聞けてとても面白かった。しかし、いちいちco-pay 払ったり通院したりするのは手間なので、今後はますます気をつけて料理しよう。


2013年4月8日月曜日

米国女性の9人に1人は使用経験あり:緊急避妊薬

米国2006-2010年における15-44歳女性の緊急避妊薬利用の実際についての統計のサマリーが以下のウェブサイトで読める。
http://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db112.htm

11%、すなわち約9人に1人の女性が利用したことがあるとのこと。(2002年時点では4.2%だったので、だいぶ増えた。)

利用したことがある人のうち、1回だけ使ったことがある人が59%、2回使ったことがある人が24%で、使ったことがあるといっても1−2回の人が全体の8割以上を占めた。

利用者の45%は、避妊方法が失敗したかもしれないという恐怖心が理由で、49%は避妊をしなかったという理由で緊急避妊薬を使ったということである。

一度でも緊急避妊薬を使ったことがある人の割合、および避妊方法が失敗したかもしれないという恐怖心から緊急避妊薬を使った人の割合は、高学歴の人により多く、その一方で避妊しなかったという理由で緊急避妊薬を使った人の割合は、学歴が短い人により多かったそうである。とても興味深い。






2013年4月7日日曜日

緊急避妊薬の年齢制限を排除せよという地方裁判所の指示

4月4日、地方裁判所が緊急避妊薬 (一般名levonorgestrel、商品名Plan B One-Step, Plan B, Next Choice) の販売における年齢制限を廃止するようにと述べた。一旦2011年に一度年齢制限をなくす算段になっていたのに、保健福祉省のシベリウス長官がそれをくつがえしてしまったという経緯がある。(その頃小芋がかいたブログはこちら: http://koimokko.blogspot.com/2011/12/blog-post_9808.html

現在処方箋なしで緊急避妊薬が買えるのは、17歳以上の人に限られている。16歳以下の人は、処方箋がないと購入できない。この年齢制限ゆえに店の奥側の棚に置かれていて、薬剤師に身分証明書を見せないと大人の人でも購入できないという面倒なことになっていた。

地方裁判所の今回の指示が、一日も早く実行に移されて、緊急避妊薬が本当の意味でのOTC薬(処方箋なしで買える薬)になってほしいなと思う。

今回の裁判所の指示は、シベリウス長官が年齢制限撤廃をくつがえした判断について、「政治的に動機付けられた、科学的に不正当なものであった」と厳しく書いていたそうである。(NPR の記事 http://www.npr.org/blogs/health/2013/04/05/176325584/federal-judge-strikes-down-restrictions-on-plan-b

専門家団体が連名で訴えてきた効果が現れたか。(以前小芋が書いた関連記事はこちらhttp://koimokko.blogspot.com/2012/12/otc11.html

価格は40-50ドルするので、この点では中高校生への負担は依然大きい。(経済的に厳しい状況にある大人にとってもそうだが。)

なお、同じ経口避妊薬でも、ulipristal acetate (商品名Ella) の方は、処方薬のままである。

追記:当初「連邦裁判所」と記載していたのは、「地方裁判所」の誤りでした。英語ではDistrict Court です。2013年6月14日訂正。

2013年4月6日土曜日

桜の植樹会

今日は North Park で桜の植樹会と桜祭りがあった。 残念ながら、桜はまだまったく咲いていなかった。つぼみもふくれてきてはいるが、まだ固い。
去年は3月に急に暖かい日がつづいて、4月に入る前に桜がみな咲いてしまったが、今年は寒くて、まだまだである。それでも、今日のように晴れると、すこぶる嬉しい。

これは前に植えた桜たち。

ピッツバーグさくらプロジェクトのウェブサイトはこちら。 http://www.pghsakuraproject.org

2013年4月5日金曜日

ウェストバージニアでのキャンプもどき

先週末、ホストブラザー2人と彼らの家族が中間地点のウェストバージニアでキャンプをするというので、私も行ってきた。彼らに会うのは、2年前にあった三男Cくんの結婚式以来である。マサチューセッツ州とテネシー州から来た彼らは9時間の運転だったが、私はその半分の時間の運転だったのでラッキー。(今回は高速道路よりも一般道の運転が長かった。農場の脇のくねくね道を行くのは意外と疲れるねぇ。)

Aくん夫妻には3歳半と6ヶ月の子ども、Bくん夫妻には2歳半と6ヶ月の子どもがそれぞれいる。ちなみに6ヶ月の赤ちゃんたちは生まれたのが1週間違いである。かれらの超スピード出産の話は以前紹介した。http://koimokko.blogspot.com/2012/09/blog-post_11.html

Aくん夫妻、Bくん夫妻とも、子どもにたいしてすごく話をしているのが印象的だった。
ただし、子どもが泣きながらぐずぐずなんか言っているときは、「それじゃ、なんと言っているのかわかんないよ。」と言って、本当は何を言わんとしているか分かっていてもあえて聞かないという厳しさがあった。

ハイキング(ただしちびちゃん連れなので、ちょっと歩いてはとまり、歩いてはとまりであまり進まない。)をしたり、子どもたちは雪だるまを作ったり、料理をいっぱい作ったりした。子どもたちが寝た後は、寝た後は、大人5人でボードゲームやカードゲームをした。

当初行くはずにしていた州立公園のキャビンは、電気なし、暖房は薪、水は近くの井戸からくんでくる、ということだったんだが、雪のため道路が通れないとかでキャンセルになり、急遽別の公園のキャビンを使った。こちらは電気も水道も暖房も電子レンジもある現代風なキャビンで、かなりお気楽な滞在となった。

ホストファミリーと初めて会ったのはもう18年近く前のこと。私もホストブラザーたちもみんなもれなく18年歳をとった。それでも、今も変わらずそのまんまの自分で受け入れてもらうことができ、たんまりと話ができるのは、本当にありがたいことである。

2013年4月4日木曜日

英語とスペイン語ごちゃまぜの会話

私のスペイン語の勉強は、ほ〜そぼそとだが、その後も続いている。

ヒスパニックの患者さんで、英語がいくらか話せる方の場合、患者さんと私とで英語とスペイン語のありったけの言葉を総動員すれば、通訳なしでもある程度まではコミュニケーションが取れるようになってきた。

逆に言うと、まだまだ患者さんの英語力に頼っているところが多いということでもある。

ということで、先はまーだまだ長いのだか、聞き取り力がちょっとずつでも増してくると、心底嬉しく楽しい。

2013年4月3日水曜日

あえて検査をしないことを選ぶということ

医学の進歩によって、いろいろな検査や治療をすることが可能になった。しかし、それらがどれだけ有効かというと、実は行うよりも行わないほうが賢明であるという場合が結構ある。

今まで慣習的にやってきたことをあえてやらないこと、また技術的にできるのにわざとやらないこと、は結構難しい。その理由の一つには、医療者自身のなかにある慣れ、抵抗感、システムの問題etc に加え、患者さんが持つ抵抗感も無視できないものがあると感じる。

たとえば、これまで長年「子宮頸がんの予防・早期発見のためにパップスメア(子宮頚部細胞診)を毎年受けなさい。」という医療者の助言にまじめに従ってきた患者さんにとって、
「去年の結果がとても良好なので、今年と来年はパップスメアをしなくていいでしょう。」とか、
「あなたは子宮筋腫と月経過多という理由で子宮全摘出術を受けたので、今後のパップスメアは不要です。」
というような医療者の説明は、ともすると、「なんていいかげんなの!」と患者さんに誤解されかねない。あるいは「やる気のない医療者」というレッテルを貼られてしまうかもしれない。

検査はやればやるほどいいというものではなく、やることでむしろ害を引き起こしたり、見つけないでいいものまで見つけてしまってそれがさらに無用な検査や治療につながったり、またそれに伴う心的ダメージがばかにならなかったり、という面がある。やるからにはそれなりのメリットが大きくないといけない。けれど、短い診察時間のなかで、このニュアンスを説明するのって、とても難しい。

納得が得られたと思っても、「あー、やっぱり、私は不安なのでパップスメアしてください!」と懇願されたりもする。ある患者さんは、一旦家に帰ったあとで、「今回パップスメアをしてもらえなかったのは、どうしても納得がいかん。」と電話をしてきた。結局その方は後日また見えて、ディスカッションをしなおして、それでもやはり彼女の希望によりパップスメアをやった。この方の場合には、パップスメアの感覚をあけることに対する不安感が非常に大きかったので、「パップスメアをやった」という満足感をもってもらうことが総合的な意味ではよかったと思われる。

このウェブサイトには、一般の人向けに、検査や処置に関する 「○○はやめておきましょう」的な項目を集めていて興味深い。内容に関しては、各種の専門家学会が協力している。
http://www.choosingwisely.org
産婦人科に関係する項目はこちら
http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/american-college-of-obstetricians-and-gynecologists/

2013年4月2日火曜日

モテキにこそ予防するオトコ

モテキにこそ予防「する」オトコ とは、厚生労働省の作った、性感染症予防のための最新リーフレットのタイトル。(男性版)
女性版のタイトルは、愛され女子の感染「しない」宣言
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/#keihatsu

平易な言葉でさらりとまとめていてよいと思った。と、大人の私は思ったけど、いまどきの若者はどう受けとめるかな。


上記ウェブサイトに載っていたビデオも見てみた。
タイトル「身近なことです 性感染症~大切な人を感染させないためにあなたができること」http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg7565.html


淋菌、ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマの話をしているときに、病原体自身の拡大写真を使って説明しているところが、なんとも日本らしくて奥ゆかしい(?)なと思った。ヘルペスによる陰部の潰瘍や尖圭コンジローマの実際の形など、実際の病変の写真の方がインパクトがあっていいんじゃないかと思うのは、私だけかな。ダイレクトすぎ? 


2013年4月1日月曜日

好きな音楽を聞かせる医師

今日はDr. Aにかわって、Dr. B が来ていた。Dr. B は患者さんひとりひとりに「好きなアーティストは?」と尋ね、そのアーティストの音楽を i Phone で検索して処置のあいだ患者さんにその音楽を楽しんでもらう、というサービス精神旺盛な医師だった。おかげで、いろんな音楽を聴くことができた。

手術室やLDRで音楽をかけたことはあったが、次から次へと診察室をぐるぐる回る日常のなかで音楽をかけたことはなかった(ロビーにはかけてるけど)ので、新鮮な体験だった。