2010年9月30日木曜日

ブロークン・イングリッシュ??

ピッツバーグという土地柄、去年勤めていたオフィス(ピッツバーグから車で1時間ちょっと)よりもいろいろな国の患者さんと出会う機会が多い。

アジア、ヨーロッパ、中南米、アフリカなど世界各地出身の患者さんと会話することはとても刺激的で私は大好きだ。お互いに言葉がままならないと、やっぱりコミュニケーションは大変だ。でもお互いの持てるものを総動員してがんばるから、そのぶんやりがいがおおきい。

アメリカ人のスタッフは外国出身の患者さんが話す英語のことをブロークン・イングリッシュだと言う。ブロークン・イングリッシュと聞いたら、片言のたどたどしい話しぶりを想像しがち。しかし実際に患者さんを目の前にしてみると、英語を話すのも聞くのも何の問題もないことのほうが多い。ただ発音は母国語の影響がでるから、聞き手としてはよーく集中して聞いて、自分の頭の中で聞こえてこない音を補ったり、余計な音を削除したりする作業が少しいる。

アメリカ人にとってブロークン・イングリッシュというのは、発音が米国風でないというくらいの意味、あるいは米国風の発音でないと聞き取りにくくて思わず張っちゃいたくなるレッテルなのかなと思う。その意味で言ったら、私の話す英語なんてブロークン・イングリッシュの最たるものだ。

えらそーに聞こえてしまうかもしれないが、アメリカで生まれ育ち英語を母国語とする人であっても、必ずしも英語が使いこなせているとは限らない。言葉の使い方が不正確だったり、自分の症状を 5W1H(what, when, where などなど)にそって説明できず、ただただ "You know? You know?" と繰り返したりする人もいる。(何回 "you know?" と言われても、ちゃんと話してくれなきゃ分からんぞ~~~)

というわけで、ネイティブスピーカーとの会話のほうがよっぽど大変ということはよくあるので、発音にちょっと特徴があるくらいで外国出身の患者さんの英語がブロークンとか言われちゃうのはなんか腑に落ちない。

2010年9月29日水曜日

遠慮しない人生: マラソン選手の出産

Runner's World という走る人(または走りたい人)向けの雑誌がある。その10月号に Great Expectation というタイトルで 女子マラソンの世界記録保持者であるPaula Radcliffe(英国)とアメリカ人の長距離選手 Kara Goucherのインタビュー記事があった。この expectation という言葉には期待という意味と、妊娠という意味がかけてある(と思う)。なんと2人そろって本日9月29日が出産予定日であった。Runner's World のウェブサイトによれば、Goucherは26日、Radcliffeは今日それぞれ無事出産したとのこと。

Radcliffeは36歳、今回3年ぶり2人目の出産、そしてGoucherは32歳初産。マラソン&長距離選手にとって妊娠・出産はキャリアに大打撃を与えかねない一大事。オリンピックは4年に1度しかないし。そんななかどのように妊娠を計画したか、また妊娠中も無理こそしないものの意欲的にトレーニングを続けてきたかが記事から読み取れる。

走ることも妊娠することもどちらも大事なことで、人生で成し遂げたいことは遠慮せずにやるんだ、という彼女たちの気迫がものすごく刺激的である。

この記事を雑誌を持っていない人にも紹介したくてウェブサイトを探したら、あった!
http://www.runnersworld.com/article/0,7120,s6-238-275--13639-0,00.html

インタビューの冒頭はビデオで見られる。
http://rwdaily.runnersworld.com/2010/09/congrats-kara-and-adam.html

2010年9月28日火曜日

Women's Health Calendar の無料配布

米国政府の Office on Women's Health が出している Women's Health Calendar の2011年版の受付が始まっている。アメリカ国内(アメリカ領と米軍基地含む)のみへの発送だが希望者に無料で配布されている。

今年2010年の分ははPDFファイルで閲覧・印刷できるので、内容が気になる方はこちらをどうぞ。年齢・リスクファクター別スクリーニング検査の一覧、薬のラベルの読み方、セカンドオピニオンについて、またとても品のよい解剖図などが載っている。
http://www.womenshealth.gov/pub/2010WHCalendar.cfm

2011年版の申し込みはこちらから。
http://www.womenshealth.gov/pub/calendar/

2010年9月27日月曜日

葉酸を含む経口避妊薬の誕生

9月24日、FDA(食品医薬局)が葉酸入りの経口避妊薬Beyaz を承認したとのニュースを読んだ。避妊薬としては従来のYazと内容的一緒。これに葉酸の代謝産物である levomefolate calciumを足してあるところが新しい。

葉酸の摂取は二分脊椎をはじめとする神経管閉鎖障害の発生を予防する。だから妊娠しうる年齢にあるすべての女性は1日400マイクログラム(0.4mg)の葉酸を摂取するよう勧められている。食事だけでは不足していることが多くて、葉酸単独のサプリメントもしくは総合ビタミン剤から必要量を確保する必要がある。でも実際のところ私の出会う患者さんでそれを実践できている人は少ない。

なんてったって、アメリカの妊娠の半数は予定外の妊娠である。神経管閉鎖障害の予防という意味でいうと、本人が妊娠に気づいてから葉酸摂取を始めたんでは時すでに遅し、ということが十分考えられる。(妊娠初期が特に大事な期間) ピルを飲んでいても飲み忘れなどで予期せぬ妊娠が起きることはあるので、ピルに葉酸を足してしまおう、という発想は手っ取り早い。(むしろ今までなかったのが不思議なくらいかも。)

ま、現実問題としてはブランドのピルは高い。そういうわけでBeyaz が出たからといってそれで恩恵を受ける患者さんは限られてしまうが、選択肢が増えたことは歓迎。

FDAの出している記事はこちら
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm227237.htm

2010年9月26日日曜日

初10km レース完走

Richard S. Caliguiri City of Pittsburgh Great Race の10km部門に参加した。参加者に配られたTシャツ。色が写真でうまく写っていないけど、地は紺色。左上に描かれているのはダウンタウンの風景。

大会史上初の14000人が申し込んだというこの大会、10km部門で7958人、5kmでは4085人が完走した。10km部門では、市の東に位置するFrick Park を出発点として、Carnegie Mellon Univercity、University of Pittsburgh、Carlow University の前を通り、Boulevard of Allies から Mononhahela川を下に眺め、最後はダウンタウンのある三角州、Point State Parkでゴールする。

いや~、よかったー。32歳にして初めての10kmレース。1kmあたりのタイムは5月に出た Race for the Cure の5kmよりよかったので、練習の成果があったというもの。沿道の声援は素直にうれしかったし、CMUやDuquesne Univ のブラスバンドが演奏してくれていたのもよかったし、ゴール地点でもバナナの味は格別だったし、一緒にこの思いを友達のP子さんと味わえたのもよかった。給水地点をはじめいろんなところでボランティアをしてくれた人々に感謝。

5kmのときよりも慌てずまんべんなく走れた気がした。前回5km、今回10kmが無事走れたのなら、次はハーフマラソンが目標かも?

以下覚え書き
・出発点付近のトイレは長蛇の列。それ以上にスタート地点の列は長い。どっちみち自分のタイムは自分がスタート地点を通過してからゴール地点に至るまでの 実タイムになるので、先頭が出発したあとでもトイレを心ゆくまでゆっくりと済ませて、それからスタートしても全く問題ない。最初の1-2kmは大渋滞なの で、遅れて出発するくらいのほうが、むしろタイムはよくなるかも。
・寒かったら保温のためにゴミ袋をかぶっていってよろしい。(たくさんの人がやっているので恥ずかしくない。)
・給水地点が何キロ地点であるかは 一応頭にいれておくべし。
・参加予定者は大会前日、前々日に開かれる expo会場にゼッケンや参加賞のTシャツを取りに行く。この会場でランニングシューズやランナー用のいろいろなグッズを売っていた。
・ダウンタウンの駐車場、またダウンタウンから出発地点まで行くシャトルバスはとても混んでいた。

2010年9月23日木曜日

異様な白斑

何ヶ月も前のある日、通常通りパップスメア(子宮頚部の細胞診)を行っていると、直径1cmちょっとの白斑が頚部に見えた。分泌物がついてそのように見えることもあるので、綿棒でぬぐってみたが取れない。そういうものが見えたということを患者さんに伝えたうえで、念のためにコルポスコピー(頚部を拡大してみる特別な顕微鏡を使った診察)での診察をお勧めする、と伝えた。

2週間後くらいに戻ってきたパップスメアの結果自体は全く問題なかったので、それでもあえてコルポスコピーを強行することは「やりすぎ」に終わるのではないかと私は思った。あいにく自分はまだコルポのトレーニングを受けてないので、別のNPにわざわざ来てやってもらうことになる。だから彼女が来る日(月1-2回のみ)にあわせて患者さんには再来院してもらわないといけない。患者さんの時間的&手間的負担、またほかのNPに対応してもらわないといけないということを考えると、もし全く問題ない所見だったら「ただ小芋の心配しすぎでした。」ということになり、恥ずかしいことになるな、と思った。

それでも白斑の見た目がどうも気になって、コルポの予約を患者さんにやっぱり取ってもらった。患者さんが急用でキャンセルしたり、逆にNPのほうが家族の事情で急に休まなければならなかったりして、パップスメアから数ヶ月たってようやくコルポが実現した。

で、担当したNPに所見を聞いたところでは、結果は頚部にお酢をつける前はたいして目立つ白斑ではなかったけれども、お酢をつけた途端にかなり頚部の広範囲に病変が見えたと。印象としてはCIN 2 (中等度異型性)だと。今まだバイオプシーの結果まちである。

似たような白斑を伴った患者さんが前にあって、そのときはコルポ診上はまったく問題なく nabothian cysts (ナボット嚢胞)が複数見られただけだったと担当NPより報告を受けた。そのときは「あー、やっぱり私が単に心配しすぎだったんだな。」と思った。今回の例は「なんか変」と思った自分の感覚を信じたがためにそれが役立った(と思われる)例であった。

2010年9月20日月曜日

食事の回数

肥満の患者さんで1日1食から2食しか食べてないという方が多い。
忙しいからというだけでなく、経済的に3食もやってられない、ということも少なからず。

3食食べていたとしても、野菜や果物は非常に少ないというが珍しくない。「野菜なんて高い!」と。

栄養に関する知識、その知識を生活に生かせるだけの経済力(料理ができる設備・環境を整えられるかも含めて)、またそれ以前に健康を維持したいという気持ちそのものなど、いろいろそろわないと健康的な食事って難しい。

2010年9月19日日曜日

翻訳家になる夢

小学校4年生のとき、ミヒャエル・エンデというドイツ人の書いた『ジム・ボタンの機関車大旅行』という本に夢中になった。もちろん読んだのはドイツ語の原書ではなく、日本語訳されたものだ。

残念ながらいまはもうどんな内容の物語だったのかぜんぜん覚えていないのだが、当時はこの本があまりにおもしろかったばっかりに、「本やく家」(翻訳家と書けなかった)になろうと思ったほどだった。おもしろいお話を他の人よりも先に読んで、それを日本語に書き換えるのは絶対に楽しいだろう、と考えたわけ。国語の時間に作った10歳の記念誌にも翻訳家になりたいという旨の作文を書いた覚えがある。

さて時はそれから20年以上経過。自分の専門分野に関する記事などをときどき訳すことがある。本というほどの長さのものではなく、数ページなどの短いものなのだが、それでも1パラグラフに延々悩んでしまったりで、まったくはかどらない。

というわけで「翻訳家」というには程遠いんだが、10歳の自分がいまの自分をみたらちょっとうれしくなるかもしれないと思って、気を取り直してがんばる次第。

2010年9月15日水曜日

粋な誕生日

今年の誕生日はいつもにもまして特別だった。

職場では定番のケーキに加えてわざわざ日本食品・雑貨のお店まで行って買ってきてくれたという雪見大福みたいなアイス(抹茶・マンゴー・チョコレート味)で祝ってもらった。バースデーカードには、寄せ書きに混じってなんと「お誕生日おめでとう」と日本語で書いてあったーー日本人の店員さんに書いてもらったそうな。演出・工夫にびっくり。みんなの気持ちに感謝。

夜はハウスメイトのナナコさんともう1人の友達と料理を囲んだ。3人の持ち寄ったおかずでなんとも贅沢な食卓。心置きなく食事とおしゃべりを楽しんだ。メールやFacebook上であちこちからもらったお祝いメッセージにはまだ返事が追いついていない。みんな超忙しい人たちなのに、マメにメッセージを送ってくれて頭が上がらない。私のことを気にかけ大事にしてくれる友達と家族に恵まれて、私は幸せものだ。心の底から感謝。

2010年9月13日月曜日

秋到来

夏終わっちゃった。

A国出身の患者さんのスクリーニング・デー

今日はアジア某A国出身の患者さんを対象としたスクリーニング・デーだった。

BさんというA国出身の方が予約の段階から患者さんのコーディネートなどに協力してくださっていた。今日Bさんは患者さんが問診表を記入する手伝いをしたり、診察室での通訳をしたり、1人何役もこなされた。最後にはオフィスの電話を使って、患者さんに代わって病院の放射線科に電話をし、マンモグラムの予約を取り付けるというというところまで粘り強くやってくださった。

今日みえたA国出身の患者さんのなかには、もう何十年もアメリカに住んでいて英語が堪能な方がいる一方、ほとんど英語を解さない方もある。英語が堪能でも、やはり英語の問診表を理解して書き込むのはなかなか骨の折れることで、Bさんの存在がなければ今日のスクリーニングは成り立たなかったといっても言いすぎでない。

Bさんは昨年もわがオフィスでのこのような催しを手伝ってくださったと聞く。どのようにBさんとわがオフィスがコンタクトを持つに至ったのか、ボスに聞こうと思いながらまだ実現していない。

ピッツバーグにはA国にかぎらず、いろいろな国から短期・長期に移り住んでいる人がたくさんいる。保険があるかどうか、また支払い能力があるかどうかだけ でなく、言葉や文化的ハードルが高くてなかなか診察にたどりつけない人は山といるだろう。今回のような催しはA国以外の国出身の患者さんにも応用できる、というかむしろニーズ大だとおもうが、Bさんのような方のサポートがないと実務は厳しい。

私は学生のときにA国出身の友達がいたので、「こんにちは」などの簡単な挨拶はなめらかに(自称)言えるんだが、それを聞いた患者さんがA語でわーっとまくし立ててこられたりすると、まったくお手上げである。もっと習っておくんだった。

2010年9月12日日曜日

Laurel Highlands の旅もよう

先日とまとまんが来ていたときの様子をダイジェストでお届け。
天気に恵まれました。Ohiopyle 州立公園の川この川沿いの道ををOhiopyleからConfluence という隣町まで往復22マイル(35km)走りました。自転車はレンタル。1時間5ドル。弁当とおやつの休憩を入れて4時間で自転車屋に戻りました。
影のとまとまんと私。

Hartwood Acres の庭を歩いているところ。またがんばるぞ。

2010年9月9日木曜日

巨大なしこり

つい先日胸のしこりに気がついたと。

そのサイズたるや、わたしの手のひらサイズといってもいいほど。
気がついたのが本当に最近なのか、むしろずっと気がついていたけど
今になって一念発起して診察に来られたのか。

彼女は持病の経過観察のため ある専門医に定期的に通っていたそうだが、
いわゆる かかりつけの医療者を持たずに何十年も過ごしてきたと。

画像診断の結果(生検も必要になるかも)が良性であるように願うばかりだ。

無保険の人など乳がん・子宮がん検診から漏れてしまいがちな人を対象にした
無料の検診プログラムがあるが、困っていてもなかなかその情報にたどり着けず
検診の機会を逃している人は少なくないと思われる。

CDC's National Breast and Cervical Cancer Early Detection Program
http://www.cdc.gov/cancer/nbccedp/
情報は最も届けられるべき人になかなか届いていないのかもしれない。

多言語電話

診察する者が患者さんの話す言語を解さない場合、Language Line という電話サービスをつかって、電話の向こうの通訳の助けを借りて会話を成り立たせる方法がある。

が、今のオフィスには診察室に電話がない!

せめてひとつの診察室でいいから、電話をつけてくれ、とボスに頼んでいる。

患者さん自身が希望するということもあって、家族や友達などが通訳になるという場合が少なくないのだが、やはりこれは問題と最近よく思う。

通訳の人が必ずしも患者さんやわたしの言ったことをそのまま訳してくれない(または訳せない)ことがあるし、また家族や友達が「通訳」という役割を果たすのは結構大変なことであるし、診察室での会話は極めてプライベートなことも聞くので家族や友達が同席していたら話せない・話しにくいという問題もある。

たとえ患者さんが家族や友達をともなって来て場合でも、あえてLanguage Lineのプロ医療通訳のサービスを勧めるようにならなければと思っている。

2010年9月8日水曜日

とまとまんとの夏休み

とまとまんが夏休みをとってピッツバーグに1週間来てくれた。日本の会社員が1週間の休みをとるのはけっこう至難の業。さらに長旅に時差というハードルに負けずに来てくれるのはいつも本当に感謝だ。

けさ彼をを空港に送って、それから8時から4時までノンストップで仕事して(えらい忙しかった)、4時にひるごはんたべて、それから5時過ぎまで仕事の続きして、で家に帰ったら床で寝てしまった。仕事中はトイレに行く暇もないくらいだったので、とまとまんのことを考える頭の余裕もなかった。まぁ幸いだったかも。

とまとまん滞在中はピッツバーグから1時間ちょっと離れたところにある Laurel Highlands という地域に泊りがけで出かけた。州立公園にいろいろ行き(かなり広い公園がいくつもある)、サイクリング(自転車を借りられる)やハイキングを堪能した。Bed and Breakfact とよばれるタイプの宿に初めて泊まったが、これもすこぶるよかった。近場では Hartwood Acres という公園がピカイチであった。ピッツバーグの周辺にまだまだ自分が知らない素敵なところがいっぱいあるということがわかった。

というわけで、ブログの更新が遅れましたー。ごかんべんを。