「つわり」が重症化して、点滴で補液するなどの医学的介入が必要になった状態を「重症妊娠悪阻」というのだが、この薬はそこまで至っていない生理的な嘔気・嘔吐症状のある妊婦さんを対象としているところが興味深い。(幅広いマーケットだなぁ。)もっとも、嘔気嘔吐が強いときにゃ薬を飲むことも困難であるから、この薬を飲める、かつ飲んだ後すぐ吐かない患者さんはまだ比較的軽症といえる。
Diclegisの成分はpyridoxine (ビタミンB6) とdoxylamine (抗ヒスタミン剤)である。合剤にして、またゆっくりと体に吸収されるように製剤したところが強みだとのことである。
実はこの薬、米国内ではBendictin という商品名で1980年台まで販売されていたが、胎児奇形の原因になるという「うわさ」が増えて、販売会社が自主的に販売を中止していた。(後に胎児奇形のリスクは否定された。)米国外ではその後も一般的に使われていたり、また米国内でもpyridoxine と doxylamine 各単剤を処方してそれらを同時に使っていたりで、新薬というほどのものではない。
Pregnancy category (妊娠時の使用における安全性を示す分類)は "A" に分類されている。Pregnancy Category A とは、適切かつ対照のある研究において、妊娠第一期(妊娠12週まで)およびそれ以降において胎児に対する危険度は見つかっていない、安全度としては最高のカテゴリー。
注意点としては、doxylamine は抗ヒスタミン剤ーーいわゆる乗り物酔いの薬と同様に眠気を催すので、この薬を使用しているときは車やその他の機械モノの運転は避けなくてはいけないということ。
参考ウェブサイト:
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