2009年7月30日木曜日

azithromycin をカバーしない保険

おりものが変なの、と言って先週みえた患者さん。内診でも顕微鏡でも子宮頚管炎(たぶんクラミジア。検査結果待ちだけど。)が疑われて、アジスロマイシン(日本での商品名はジスロマック、アメリカではZithromax) 1g を処方した。アジスロマイシンのすばらしいところは、たった1回1gの内服で治療が完了すること。

今週に入って、「処方箋を持って薬局にいったんだけど、自分の保険ではカバーしてないっていわれたんですぅ。」と同じ患者さんがひょっこり現れた。

アジスロマイシンをカバーしない保険なんて聞いたことないけど??と思いつつ、ちゃんと薬を早く飲んでもらわないとという気持ちで、州政府から支給されているアジスロマイシンを彼女が使えるように手配した。

あとでスタッフがいうには、「あれはきっと、彼氏か友達にあげる薬をもらいたくて、保険でカバーされなかったということにしたんじゃないの。」ということ。

ほんとのところは分からんが、頼むから薬はちゃんと飲んでおいてほしい。

水道代は払えんけど、タバコ代は払える患者さん

水道利用者が支払いを滞納したら、ふつうは水道を止められて使えなくなってしまう。ところが、医師やNPなどの医療者が、「この患者さんは***病で seriously ill (=重症)であり、水道が止められると病状悪化のおそれがある」という旨の証明を所定の用紙に記入すると、患者さんには30日の支払い猶予期間が与えられる。この間、患者さんは水道を利用することができる。

妊娠中期、とくにこれといって合併症もなく順調に経過している患者さんから、上記の用紙への記入をもとめられた。うーーーーむ。さっきタバコ吸ってるてゆうてたんちゃうん? タバコ買うお金があるんやったら、水道代になんで使わへんのーー、と思った。思うだけにとどまらず、彼女にそのまま言っちゃった。

seriously ill と表現するにはぜんぜん似合わない患者さんであるが、上のお子さんたちや家族みんなにとって水がないのはやっぱり困るだろうと思い、用紙にはサインした。30日の猶予期間は与えられても、支払いが免除されるわけじゃあない。さっさと払ってくれるといいけど。こういう証明書の発行は、気分のいいものではない。

2009年7月29日水曜日

さんまを食べ終える

先週の土曜日に東京商店で買ったさんまを、今晩食べ終えてしまった。あー、食べちゃった。

なげいても始まらないので、雨のあがったすきを狙って、夕飯の後に公園に歩きにいった。(今ほんまに夏なのだろうか??と思うくらい、最近は雨がよく降り、気温のあまり上がらない日が多い。昨日は久々に夏日という感じだったけど、今日はまた梅雨のような天気だった。)

以前紹介した Women Challenge という8週間のプログラムは終わったけど、その後も毎日の運動の記録をつけたり、週1回メールで送られてくる健康に関するクイズに答えたり、けっこう活用して る。運動を単なる個人的な短期ブームに終わらせずに、一生ものにするうえで、ウェブサイトも捨てたもんではない。毎週日曜日に1週間の目標を立てるものだから、それを達成すべく、案外やる気になるわけ。
http://www.womenshealth.gov/woman/

7月頭からほぼ恒例になった毎週水曜日の出張。農業中心の地域。このオフィスのマネジャーとメディカルアシスタントの人の良さといったらない。彼女たちの人柄なのか、地域性によるものなのか、その両方か。いずれにしても、精神的にものすごく救われる。昼ごはんもみんなで和気あいあいと食べている。なんで自分はいつもあんなにガツガツと仕事をしているんだろう、とふと思う。同じ組織のクリニックでも、マネジャーの考え方や、地域の特徴によって、NPの仕事(仕事そのもの以上に心理的負担?)がこんなにも変わるもの? 午前中の妊婦検診には、毎週医師が来て、彼と一緒に動く。彼は患者さんとしっかり向き合って話すタイプ。自分の勉強になることがいっぱい。

2009年7月28日火曜日

性格テスト

先週土曜日の「心の健康」をテーマにしたイベントの前に、事前資料としてこちらのウェブサイトがメールで紹介されていた。ここで性格テストが受けられる。
http://www5.big.or.jp/~seraph/zero/mbti.cgi

~~ここから先は性格テストをやった後でお読みください~~

外向ー内向
感覚ー直感
思考ー感情
判断ー知覚
の4つの尺度で性格を見てくれる。

私の場合は、
11% 内向
25% 直感
62% 感情
39% 知覚、と結果が出た。
総合すると、これは「治療者/理想主義者系」だそうで、
適した職業としては、作家、カウンセラー、ソーシャルワーカー、牧師、教授、心理学者、精神科医、理学療法士、マッサージ師、ミュジシャン、聖職者、宗教家、司書、ファッションデザイナー、編集者、アートディレクターなどだそうだ。あたってる?

性格テストは、自分がどういう人間かというのを知る助けになると講師が言っていた。逆に、自分が理解できないと、他人も理解できない、とも。 自分がどのようなレンズで世の中を見ているのかを理解して、それを意識できていると、自分がほかの人との関係でうまくいかなかったりいらいらしたときに、それを解決する助けにもなるよ、と聞いて、ほー、と思った。まず、自分理解ね。

2009年7月27日月曜日

歯科検診

日本に一時帰国した12月以来、7か月ぶりに歯医者に行った。日本の歯医者が作ってくれたナイトガード(歯ぎしりによるダメージを緩和するために歯にはめる装置)が大分削れてきているし、そろそろ定期検診の時期だし、ひととおり見てもらいたかったのだ。

歯と歯茎の状態はおおむね良好。(よかった!!!) 歯科衛生士も歯科医師も、丁寧に見てくれて質問にもきちんと答えてくれたので満足。

気になっていたことのうち、下の前歯2本が微妙に前に突出してきている点に関しては、レントゲン上 歯根が不自然に短くなっているということで、periodontist (歯周治療専門医)でさらに見てもらうようにいわれた。

アトランタでは歯周病にかかってしまい、そのうえ歯科で非常に嫌な思いをした。今でも思い出すだけで腹が立つ! 今回はあらかじめ周りの人に歯医者情報を聞きまくってから今のところを予約した。リサーチ重要。前回の反省が生きたかな。

居残り

月曜日。最後の診察が7時少し前に終わったあと(これ自体は遅くない。月曜日は11時から7時の勤務だから)、メディカルアシスタントからの伝言を読んで、患者さんに電話をかけなおしたり、薬局に処方箋を伝えたり、ごそごそいろいろやってたら暗くなってしまった。日が短くなってきて、さみしー。(といっても、まだ8時半くらいまではそこそこ明るい。)ひとつひとつのことは大したことないんだけど、積もると案外時間がかかるもの。

居残りはよくない。でも、誰にも邪魔されずに仕事を片付けられるのは かなり快適。

2009年7月25日土曜日

さんま

先の記事に書いたとおり、ピッツバーグに行ったので、久々に東京商店に買い物に行った。お米20ポンド(9kgくらい)、豆腐(生の一丁と長期常温保存できるタイプの1ダース)、納豆(一包4パック のを4つ)、そして冷凍さんま(3匹1パックで$3.99)を買った。

さんまをトースターで焼くか、フライパンで焼くか迷ったあげく、せっかくあるのにぜんぜん使っていない備え付けのオーブンで焼くことにした。結構うまく焼けた。大根おろしがなくて残念だった。ともかくおいしく食べた。

なんだか今も部屋中にさんまのにおいが立ち込めている気がする。でも幸せである。

在米日本人のこころの健康

「心の健康」をテーマにしたピッツバーグでのイベントに今朝参加した。24-25人の日本人が集まった! (子どもたちを入れると30人以上)

自己紹介では、ひとりひとり
1.名前
2.日本の出身地
3.好きな食べ物  を言った。これで一気にに和やかな雰囲気になった。

年齢も状況(仕事、留学、シングル、家族と一緒etc)もさまざまな人が来ていた。家庭医さんの進行のもと、どういうストレスを感じているかや、どうやってそれを克服してきたか(いるか)をざっくばらんに話し合ったりして、あっという間の1時間余だった。参加者がそれぞれ自分の思いや経験を言い合い、また聞き合うーーそれだけでも貴重な場だと思った。たとえば、来米してまだ間もない人が今のストレスについて述べると、長年アメリカに住んでいる人が、すかさず「大丈夫よ!」と自分の経験談とともにエールを送ってくれた。経験者の言葉は、胸にぐっとくるものがある。

自分を知る、ということが心の健康の第一歩だよ、また、日常生活の中で起こってくる自分の感情について ふと立ち止まって考える習慣が必要かもしれないね、という最後のまとめのメッセージはなーるほど、と思った。

イチゴ、ぶどう、オレンジ、コーヒー、紅茶、ジュース、牛乳、クラッカー、チョコレート、チーズを各自つまんだり飲んだりしつつ、というスタイルはとても居心地がよかった。(アメリカの気軽なセミナーではよくあるスタイル。) 会がお開きになったあとも、他の参加者の人たちといろいろおしゃべりした。帰るのが惜しい思いだった。

今度は単にポンと参加するだけじゃなくて、企画・運営にもぜひ関わってみたいと思った。

2009年7月24日金曜日

障害のある患者さんと月経

知的障害や身体障害のある患者さんがときどきみえる。障害のある患者さんにとって、しばしば毎月の月経はやっかいだ。患者さん本人が自分で月経の手当て(ナプキン、タンポン)ができるときはよいのだが、月経が理解できなくて混乱したり、手当てに失敗して服を汚したりで、本人と周囲のサポート役との両方にストレスをきたすようだ。

患者さんと介護者のリクエストにより、経口避妊薬(ピル)を使うことがある。ピルを使うことで、出血量が減り、出血する日数も短縮される傾向がある。月経痛も軽くなることが多い。これら「避妊」以外のピルの副効用を活用するわけだ。

Seasonale, Seasonique, Lybrel といった、extended cycle pills (84日間ピルを飲み、7日間プラセボを飲むパターン、あるいは365日ピルを飲むパターンなど)だと年間の出血日数もぐっと減らせるので、それらを希望されることもよくある。毎月出血に対応するよりも、3ヶ月に1度のほうがずっと楽だから。(破綻出血という少量の出血が不定期に起こることはあるが。)

Seasonale, Seasonique, Lybrel はいずれもブランドなので、実際処方するときは1パック28錠のジェネリック薬で代用して、プラセボをすっとばして使ってもらったりもする。(患者さんの薬代を節約するため、もしくは保険がカバーしてくれる薬を使うため。)

障害がある人にもない人にも、ピルをはじめとする避妊薬は、月経とうまくつきあっていく上での有効な味方になることが多い。

世界地図上の2点間の距離をはかる

今自分の住んでいるところと とまとまん の住んでいるまちの距離を測ろうと思ってGoogle map で検索した。そしたら、アメリカ西海岸まで陸路で(車で)行って、そこから太平洋をカヤックで渡り(3800余マイル)、さらに高速道路や一般道を通っていくという、たいそうな道のりが出た。ちなみに、所要時間は約36日6時間だそうだ。

私の知りたいのは最短距離だったので、別のところを探した。
このサイトはすばらしい。
http://worldmaps.web.infoseek.co.jp/distance_calculation.htm
「検索」をクリックして、出発地の住所を入力し、さらに目的地の住所を入れると、最短距離が計測される。

他にもこういうサイトを探している人がいるかもしれないと思い、紹介するしだいです。

2009年7月23日木曜日

10代の女の子と母親

中学生・高校生の女の子と、そのお母さんとの関係はいろいろだ。

お母さんには内緒でこっそり受診する子がいると思えば、お母さんと友達のように仲がよく、お互いに居心地よさそうな親子もいる。お母さんではなくて、なかのよいおばさんと来院する子もいる。

まず最初診察室に入ったら、自己紹介をして、患者さんには同席しているお母さんやおばさんを紹介してもらう。で一旦お母さんetc には退室してもらう。そして守秘義務のことなど患者さん本人に話をして、主訴を簡単に聞いた後、お母さんらに同席してもらいたいと患者さんが希望する場合はふたたび同席してもらうようにしている。

先日難しかったのは、お母さんに半分無理やり連れてこられた女の子。彼女の場合、お母さんは診察室には入ってこなかったので、私はお会いしていない。本人はセックスをする予定は当面ない!と断言。月経は毎月周期的に来るし、月経痛もないし、月経で困っていることはないという。ならば、ピルをはじめとする避妊薬は使わなくていいと思うけど?と提案すると、本人はとても安心した様子で笑顔だった。しかし診察が終わって5分とたたないうちに、わんわん泣いて「やっぱりピルください! ママがピルの処方箋をもらってこなくちゃだめだって。」と訴える。母親は、ボーイフレンドがいる=セックスをまもなくするに決まっている という考えなのだという。で、また話が振り出しに戻った。

彼女のお母さんとしては、娘の安全や健康を考えた上で娘にピルを!!と願ったのだろうが、それを娘さんの選択肢として提示するのでなくて、強制してしまったのが困ったところであった。お母さんと直接話をしたほうが早いと思ったが、患者さんはそれを望まなかったのでできなかった。結局、お母さんをだまらすために、彼女はピルを飲み始めることを選んだ。うーーーん。

休暇にたいする考え方

日本では、有給休暇を消化しないまま翌年に何日も持ち越して、結局次の年もそれを使えないまま捨てる羽目に羽目になっちゃう、なんてことは珍しくないとおもう。

アメリカでも職種やポジションによって状況は違うとおもうが、わが職場ではスタッフ不足の昨今でも、オフィスマネジャー以下それぞれのスタッフが遠慮なく(?)しっかり休みをとっている。誰かが休みだと、その分働いているスタッフに負担がかかるのは明らかだが、かといって休みを取らない理由にはならないもよう。スタッフの休みが重なって、あまりに人手不足のときは、同じネットワークのほかのオフィスのメディカルアシスタントに来てもらっていることもある。人が足りなければ、そうでもして他から人を補ったらいいのだ、ということね。

2009年7月20日月曜日

じぶんの婦人科健診

今日は仕事の前に、産婦人科医の診療所にじぶんの健診を受けに行った。ほんとうは自分の職場で、NPのティーナにやってもらうのが多分一番簡単なのに、あえて違う施設に出かけるのは、ほかのやり方をいろいろ見てみたいから。待合室の雰囲気、壁に張ってある掲示物、テーブルに置いてあるチラシなどなど、すみずみまで興味しんしんである。

予約時間の20分前に着くように行ったが、HIPPA(医療における個人情報の扱いに関する法律)関連の同意書、住所・電話番号などの基本情報の用紙、それから7-8ページにわたる問診表、それらにペンを走らすうちに、あっという間に予約時刻は過ぎた。それからナースに体重を測ってもらって(個人的には身長も自己申告じゃなくて、測ってくれるとうれしいんだけど)、診察室に案内してもらって血圧を測ってもらった。そのあと1人になって全身の服をぬいで、診察用のガウン(布製)に着替えて医師を待った。

私の家族歴・既病歴はいたってシンプルだし、今なにか体調が悪いわけでもないので、診察はあっという間に終わった。カルシウム600mgを朝晩2回、それにビタミンDを1日 1000 IU 摂るように勧められた。ちなみに私の摂っているビタミン剤だと、これにはぜんぜん足りない。ビタミンDの血液検査のオーダーも出た。ビタミンD不足、および骨粗鬆症のリスクをとても気にしているようであった。私がアジア人だからそう言っているというわけではなく、全患者さんに勧めているようだ。今度ほかの診療所に内科健診も受けに行くので、それを待って、まとめて血液検査に行こうと思ってる。

カルシウムを1日1200mg、ビタミンDを 1000 IU 摂る件に関しては、ちょっとためらわないでもない。ちなみに日本の基準からすると、2倍以上の値だ。日本の基準が低すぎるのかも? せっせとヨーグルトを作って朝に晩に食べているので、医師の勧めた量を丸ごとサプリメントだけで摂る必要はない。ま、ぼちぼち考えよ。たくさん摂っても、吸収されなければ意味ないし。でも祖母はosteopenia だしなぁ。アジア人でかつ体重軽い(いずれも骨粗鬆症のリスクファクター)しなぁ。痛みなく、丈夫な骨とともに長生きしたいのは確か。weight-bearing exercise (体重負荷運動)もせっせとやるべし。水泳だけじゃだめね。

2009年7月19日日曜日

海の日の笑顔

日本は海の日だそうだ。こっちはまだ日曜の晩だけど。

とまとまん こと 我が夫は、久々に実家に帰ってゆっくりしている。ゴールデンウィークは風邪をひいていて家から出られなかったから、帰省したのは1月以来のことだ。

日本の会社では珍しいことではないが、このところ残業がいつもにも増して多くて、週末になっても シカクイ「会社顔」がなかなかほぐれないことが多かった。この週末はいっぱい笑ってすっかり「家顔」に戻っている様子が見れて、私はすんごくほっとしている。今朝、なぜかマイケルジャクソンのムーンウォークの話になって、私が試す羽目になった。私の姿があまりにおかしかったらしく、とまとまんは馬鹿うけしていた。そんなに笑わんくてもーーと思ったが、笑顔にはすごく安心した。インターネットとスカイプのおかげ。

とまとまんの夏休みの予定が決まった! 目指す目標があると、励みになる。新しい一週間、またがんばろう。

2009年7月18日土曜日

カウンセラーのカウンセリング

今回私が参加したHIVカウンセリングの研修会は、カウンセリングというとてもクリエイティブな作業を3日かけて学ぶ非常に贅沢な時間だった。一方的に講義を聴く形ではなくて、9人全員または2-3人の小グループに分かれてディスカッションやロールプレイをやる場面が多かった。巷では「あの研修会は退屈」と言われているそうだが、私にとってはHIVに限らず患者さんとのかかわりすべてに通じるメッセージをたくさんもらう機会になった。

3日目は予定よりも大分早く終わった。私はまだもうちょっとロールプレイで練習したくて、講師に頼みこんで個人的に時間を取ってもらった。というのも、せっかく学んだことを激忙しい現実場面でどう実現させたらいいか、まだ十分見えていなかったから。悲しいかな、HIVを含む性感染症のスクリーニングの予約に確保されている時間は、ほかの種類の診察にも増してわずかなのだ。

講師はロールプレイの相手をしてくれただけでなく、私が置かれたクリニックの状況の話も聞いてくれた。「私たち(ナース同士)は支えあうものなのよ。」と。なんと心強い。

講師との個人的セッションのなかで、やっと納得できたことは:
1.同じ内容を聞く質問であっても、あえてopen-ended question (はい・いいえで答えられない形の質問)で聞くほうが、一見時間がかかるように見えて、本当は多くの情報を集められる 
2.情報や選択肢を提示するまえに、患者さんにそれらについて考える質問を投げかけるべし――患者さんが自分で考えて出してきた答えは、カウンセラーがぺらぺら語る言葉よりもずっと価値がある――患者さんに全くアイディアが思い浮かばないようだったら、そこで初めて情報や選択肢を提示する――そのほうがずっと患者さんのこころにすっと入る

診察時間の短縮ばかりを目指して診察をすると、患者さんとのやり取りは非常に機械的になって、誰に対しても同じ質問やコメントをまるでセリフのごとく述べざるをえない、と少なからず私はおもっていて、だからこそストレスがたまっていた。open-ended question を下手に使いすぎると話が広がりすぎて、厄介なことになるとも思っていた。だけど、今回の研修を受けながら思ったことは、私が「正しい」コメントをしたところで、患者さんの役に立たねば意味がない。私はあくまで、患者さんがどうしたいのか、それをどうしたら実現できるのか、患者さんに考えてもらうきっかけとなる質問をする人。情報はここぞというときだけに持ってくる。

もちろん、closed question (はい・いいえで答えられる形の質問)で尋ねなければしょうがない質問もあるし、際限ないopen-ended question を繰り返して 禅問答のようになってもいかん。要領をわきまえないといけない。

翌金曜日、意識して患者さんへの質問のスタイルを変えてみた。これがことのほかヒット。(けど一瞬止まって、open-ended question にするのは簡単ではない。) むっちゃ頭を使うが、おひとりおひとりの患者さんの状況に合わせた話の展開になる。それはこうしたらいいんですよ、と言ってしまいそうになる場面で、あえて患者さんにアイディアを聞く。患者さんのなかにすでに答えがあったり、なかったり。それに応じて私が次に言うことも自ずから変わってくる。講師が言っていた exchange ideas とはこういうことか、と思った。

今回の研修会で学んだことは、自分にとって飛びきり新しいことではなくて、むしろ大学の基礎看護学の演習や、エモリーのヘルスアセスメントの演習をはじめとしていろんなところで習ってきたこと。けど、いま改めて勉強することで、もっと(やっと?)身になる感じ。

2009年7月15日水曜日

HIVカウンセリング研修会

昨日から始まったHIVカウンセリングの研修会では、HIVにかぎらず、健康行動をサポートするカウンセリングにすべて共通することをたくさん学んでいる。私の住んでいる郡(county) とその周辺の郡から、9人が参加している。 ファシリテーターは州の Department of Health に勤めるHIV担当の看護師。ここでいうHIVカウンセリングとは、HIV抗体検査の前後のカウンセリングのことを主に意味している。

体をたくさん動かすわけでないのに、いつも以上にお腹がすく。というのも、すごくいっぱい考えさせられるから(と思う)。一方的に講義を聴くというスタイルの学習はほとんどなくて、常に聞いて考えてしゃべって、を繰り返す。行動変容を促すカウンセリングを学ぶにあたって、自らの行動変容をも促されているかんじ。講師はwhat や how ではじまる質問をいっぱい投げかける。ロールプレイでは、自分がwhat や how で始まる質問をたくさん考える。

限られた診察時間のなかに、今回学んだことをどう取り込むのがいいのかーーー、最終日の明日の課題はおおきい。

2009年7月14日火曜日

新生児NPの講演 本日7月15日 in 東京

Neonatal NP の エクランド 源 稚子 が、東京で講演されます。エクランドさんにはまだ直接お会いしたことはないのですが、3月からメーリングリスト上で興味深い話をたくさん伺っています。駆け出しNPの私にとって、学ぶことがいっっぱい。
直前ですが、少しでも多くの方にエクランドさんの話を聞くチャンスをと思い、お知らせします。

東京女子医科大学母子総合医療センター講演会
日時:平成21年7月15日(水) 午後5時30分~7時30分
場所:東京女子医科大学外来棟5階 大会議室

講演:
1.  Development and prevention of lung injury in preterm infants  40分
Jesse D. Roberts Jr, MD

Professor, Department of anesthesia and Critical Care and Pediatrics
Cardiovascular Research Center, Harvard Medical School at Massachusetts
Genenral Hospital. USA

2. 米国における新生児NPの現状  20分
Wakako M. Ekland, MSN, APN, NNP-BC
Neonatal Nurse Practitioner
Mid-Tennessee Neonatology Associates, PC

2009年7月13日月曜日

荒れる月曜日

きょうも荒れた月曜日だった。何だか何回も同じことを書いている気がするが、月曜日というのはいつもとびきり忙しい。ティーナがいない中(夏の間、ずっと月・金に休みを取っているから)診察しつつ、電話の対応しつつ(机に帰ってくるたび、この患者さんに電話してね、とメディカルアシスタントからのメモあり)、検査結果の対応もして、、、息つく暇なし。合間にりんごとバナナとクラッカーを食べたが、弁当を食べるのを後回しにしていたら、ついに仕事の時間が終わってしまった。そのころになると、もう空腹も忘れてた。

明日から3日間は外に研修に行くので、どうしても仕事を終わらせておきたくて、メディカルアシスタントが帰った後、1人でしずかに残りの仕事を片付けた。ひょっこり出てきたメディカルアシスタントからのメモをみて、ある薬局に処方依頼の電話をしたら、そこは留守電のない薬局だったためにメッセージが残せず困った。大手の薬局は大概24時間受付の留守電機能があるのだが、小さ目の薬局だと閉店と同時に処方箋の受付もおしまいだから、こういうとき困る。明日の朝かけなおすしかない。

患者さんからの質問の電話は、診察と診察の間にせわしくかけると、いかに早く切り上げるか、という焦りがあるが、診察が終わったあとだと、自分に余裕があるから、ちゃんと向き合って話が聞けた気がする。ただし患者さんにしてみたら、ようやく7時半すぎにかかってきた電話に、困惑したかもしれない。

あわてなくていい検査結果は、あす出勤するティーナに残してきた。私は明日から3日間、HIVカウンセリング・検査の研修に出る。ひさびさの研修。たのしみ。

2009年7月12日日曜日

物は捉えかた次第

メディカルアシスタントに、
「患者さんがあと5人待ってるで。」と言われるのと、
「小芋、あと5人。なんてことないなー。We can do it!」 みたいに言われるのでは、ぜんぜん違う。

金曜日、出張先のメディカルアシスタントは後者のパターンであった。むちゃくちゃ明るくて盛り上げ上手な人だった。同じ状況でも、捉えかたで随分パワーの出方が変わるもんだ。たとえ否定的なコメントを言われても、自分の頭のなかで positive に変換できるようになれば怖いもんなし。

蝉に負ける

毎夕(日本時間の朝)スカイプで とまとまん を起こすのが私の日課のひとつ。最近は蝉がシャウシャウシャウシャウシャウシャウーーーとうるさいので、私が鳴らす電話音は、なかなか とまとまん の耳に届かない。蝉に完全に負けている小芋でした。

2009年7月9日木曜日

ドレスコード

人事部から、服装に注意せよという知らせが全職員にきた。夏はドレスコードの解釈がいいかげんになりがちだ、と。会社の決まりでは、職員は通常「ビジネスカジュアル」に装うべし、となっている。かっちりしたビジネススーツを着る必要はなくて、"comfortable"な格好でよいのだけど、 あくまで"professional image" を損なわないものでなければならないわけだ。

ブラウスA・B・C・D・E、カットソーA・B・C と ズボンA・B・C の全 8×3=24 パターンでこの夏を乗り切るつもりの私ーーこれらの服は最初から実習や仕事用として持っていた(or 買った)服なので、今回のお知らせに関して言えば、なにも問題はない。サンダル履きじゃ仕事にならんので、靴をはいているし。同じネットワークのNPの中には、白衣を着る人も着ない人もいるが、私は丈の短い白衣を着るようにしている。

服装注意のお知らせが出回ること自体がちょっと私には面白く思える。メディカルアシスタントがスクラブを着るのは普通のことだとして、オフィスマネジャーがスクラブを着るのはどうなんだろうか、とときどき思う。同じスクラブといっても、単一色の、手術室で使うようなタイプのものだけじゃなくて、とても品のよい色・柄ものもあれば、派手すぎてちょっと私は頂けないものまで、いろいろ幅はあるが。ふと思い出すと、エモリーの関連病院では、受付などの事務職の人にはユニフォームを指定していた。「オフィスカジュアル」からユニフォームに移行したのを見たとき、私はすこし驚いたが、白いブラウス・ワイシャツに、紺やグレー系のわりとかっちりしたスーツを着た人に対応されるのはまんざら悪くなかった。

「ビジネスカジュアル」はカッチリしたスーツ姿と比べると親しみやすい雰囲気を与えるが、ともするとだらけた印象になってしまうーーーしかも印象を決めるのは着ている本人じゃなくて、それを見る他人側なので、気をつけないといけない。

2009年7月7日火曜日

予算カット

わが社は健康保険を持っている患者さんだけでなく、保険のない患者さんにも出来るだけ医療を提供すべく、州政府やそのほかの組織とタイアップしたいろいろなプログラムを運営している。そのひとつ、州政府のSTDプログラムでまかなわれてきた子宮頸がん検査が、州の予算カットのため今月からできなくなってしまった。

実際のところ、このルートで子宮頸がん検査を受ける患者さんの数は少ないのだが、それでもこのプログラムのおかげで無料で子宮頸がん検査を受けていた患者さんにとっては痛手である。子宮頸がんは早期発見・早期治療で大いに助かるがんだ。子宮頸がん検診は数あるがん検診のなかでも、かなりの優等生の部類。

仕事をときに失っても、貧しくても、基本的な医療へのアクセスは確保されるべきだ。税収が減った→予算が減った→子宮頸がん検査カット! なんて悲しい。そもそも健康保険がいきわたっていないことが問題なのだが。ある意味州のSTDプログラムは、健康保険がない人のための補完的制度なわけで、みんなに健康保険があるならば、このプログラム自体が無用になる。

子宮頸がん検査のフォローアップ

週末のことばかり書いていると、遊んでばかりいるみたいなので、仕事の話も書かなくちゃ。米国では子宮頸部細胞診の結果は、Bethesda System を使って表現されます。(日本のクラス分類とはちょっと違います。)

20歳以下の女性に
ASC-US - 意義不明異型扁平上皮細胞 (日本語にするとなんか怖いね)や
LSIL - 低度扁平上皮内病変
の結果が出たときは、HPV(ヒトパピローマウイルス)を調べたりコルポスコピー(子宮頚部を観察するための特別な顕微鏡)での診察をせずに、単に1年後に再度細胞診をすればよいということになっています。なぜなら若い人の場合は、治療なしで正常に戻る可能性が高いからです。

ASC-USやLSIL自体は正常結果と言えないものの、かといって今すぐ手を打つわけでもないという意味では、正常に準じる結果です。(20歳以下の患者さんに限って言えば。)

先輩のティーナは、20歳以下の患者さんのASCUSとLSILは正常と扱い、あえて患者さんに結果を告げません。ティーナいわく、どうせ今は何もしないわけだし、電話して報告したら、患者さんに余計な不安を与えるだけだ、と。もちろんカルテとコンピュータのシステム上には記録を残し、1年後患者さんに年次健診のお知らせを送る手配はします。もし翌年患者さんが年次健診に来なかったら、もう一度手紙で催促します。

系列のクリニックのCさんは、電話で患者さんに「検査結果について直接会ってお話したいので、予約をとって来てください。」というそうです。(このときは詳しいことは何も言わない。)そして、直接患者さんと面と向かって、パップスメアとは、子宮頸がんとは、ASCUSとは、みたいな話をするそうです。さらに、このときに禁煙や健康的な生活習慣の重要性について強調できる、と。単に結果を伝えるための面談というよりは、健康教育の絶好の機会と捉えているようです。

私個人としては、Cさんのクリニックのように時間を割いて患者さんに話をすることができれば、ベストだと思います。しかし自分のオフィスでは患者さんの数がCさんのクリニックよりも多いのと、「異常」結果の率も非常に高いので、そのたびに予約を確保して患者さんに検査結果を報告するのは現実的ではありません。

で、少なくとも電話でだけでも話をしようと頑張ってきたのですが、患者さんに電話をしたところで、必ず患者さんがつかまるとは限らず、「折り返しお電話ください」と留守電にメッセージを入れておくと、後で患者さんがかけてきた電話に対応するのが結局ティーナだったりするわけで(私がそのとき診察で席を外していたりして)、これがティーナにはすこぶる不評。

現実路線でいうと、今自分が置かれた場においては、20歳以下のASCUSとLSILは準正常として処理し、患者さんへの電話はせず、翌年の年次健診のときに話をするのがまっとうなのか、と考え中。

願わくば、子宮頸がんワクチンを受ける人が早いこと大多数になって、タバコを吸う人もうーんと減って、子宮頸がん検査で異常が出る人の数がごっそりと減ってくれれば、少数の「異常」結果への対応ももっと丁寧にできるのに。ちなみに、21歳以上でLSILかそれ以上の結果が出たとき、またASCUSでHPVが陽性のときは、すぐ患者さんに電話をし、コルポスコピーの手配をしています。

日本語で子宮頸がんについてわかりやすく書いてあるサイトを見つけました。
子宮頸がんを考える市民の会 のウェブサイト
http://www.orangeclover.org/index.html

アメリカの国立がん研究所のサイトの日本語訳
http://www.cancerit.jp/NCIinfo/factsheet/HPV.html

独立記念日の週末

たいへんご無沙汰しています。7月4日は米国の独立記念日でした。今年は土曜日にあたっていたので、私の勤める会社では前日の3日が休みになりました。で、金・土・日の3連休を利用して、NY州の北の果てに住むホストファミリーを訪ねました。その昔私が16-17歳のとき、ミシガン州で1年間私を預かってくれた家族です。

先日ホストブラザーの1人がボストンで結婚しました。彼の結婚を地元で祝う会が金曜の夜にありました。これに参加するため、ミシガンの祖父母や、インディアナに住むおじおば・いとこたちも家に泊まっていました。19人分の朝ごはんでは、卵を3ダース使いました。夜はおしゃべりに花が咲きました。朝は朝で早くから次々と誰かがシャワーを浴びたりドアを開け閉めする音で実ににぎやかで、さらには「起きちゃったの。」と中学生のいとこが早うから話しかけてきたので、自分も早くから起きる羽目に。
7月4日といえば、全米あちこちで花火が見られます。今回は寒くって、ジャンパーの上に毛布をかぶってみました。それでも楽しかったです。

NY母の友人のイチゴ畑でのイチゴ狩りは大変でした。みんなが疲れても、母が「まだあるよ、まだまだあるよ。」と言ってねばるので、私もそれに付き合ってーーたぶん2時間くらい取り続けたと思います。帰宅後は、洗ってつぶして冷凍して、で日が暮れました。車のトランクにいっぱいになったイチゴの写真がこちらです。白いビニール袋にもイチゴがいっぱい詰まっています。
今回の旅では、往復950マイルくらい走りました。kmだと1500kmを超えています。われながら、無事帰ってこれて何よりと思います。行きは木曜の仕事のあと夕方出発して、夜モーテルに泊まり、翌朝つづきを運転したので楽でした。帰りは休憩を入れて10時間ちょっとかかりました。長時間の運転とイチゴ狩りで背中が痛くなってしまいましたが、ホストファミリーと過ごせてとても充実した週末になりました。

2009年7月1日水曜日

わが市は都会?

今日からしばらくの間、週に1度だけ、家から1時間ほど東方向のクリニックに出張することになった。常勤で働いていたNPのAさんが非常勤になったため、NPなしの日が週に何回かできて、その一部を埋める役を私が務めるというわけ。

Aさんはとても丁寧で優しい物腰のNPで、非常に親切にオリエンテーションしてくださった。その話のなかで、「ここは小芋さんの住んでいるurban area(都会)と違って、田舎なのよ。」とAさん。思わず「urban ですって?」 と言ってしまったが、農業が主産業のこの地域と比べると、わたしの住む地域は都会なのだという。たしかに、クリニックのすぐそばにも牧草地やとうもろこし畑が広がっていた。

ここのクリニックは指導医と非常に密な関係を持っていて、指導医が週に1度診察に訪れる。顔を合わせてまめにディスカッションできる体制が非常によいと思った。

同じネットワークといえども、新しいオフィスに行くたび、ものの置き場とかちょっとしたやり方の違いに毎度戸惑う。来週はもうすこしスムーズに物事を進められるようにしたい。マネジャーもメディカルアシスタントもとても丁寧な人たちだった。「都会」の私のオフィスも、この物腰を学ぶ必要があろう。