2011年11月30日水曜日

パートナーからの暴力とリプロ・ヘルスの深い関係

今日は午前中いっぱい使って、intimate partner violence, 恋人や配偶者からの暴力) と reproductive coercion (セックスや生殖に関する支配、支配力)の影響について学んだ。

というのも、とある研究グループが IPV/RC に関する介入研究をしていて、 わがオフィスが「介入群」のひとつに選ばれたのである。「介入」の手始めとして、スタッフ全員がトレーニングを受ける機会に恵まれた。

これまでIPVに関しては、NPプログラムでも、その後就職してからの研修でも学ぶ機会がちょこちょこあったが、今日のトレーニングは目からうろこ、あぁ今日まで生きててよかった、というような内容だった。

従来私が学んでいたのは、IPVとはなにか、IPVの頻度がいかに多いか、そしてスクリーニングの質問をルチーンで尋ねることがいかに大事か、もしIPVの存在が明らかになったらどうリソースにつなげるか、というような感じ。

しかし今回の主眼はIPV/RCを「見つけて援助につなげること」ではなかった。むしろ、IPV/RCを背景にしてしばしば望まない妊娠をしたり性感染症にかかったりする事実を踏まえ、患者さんがリスクを少しでも下げられるようなオプションを提示し、クライアントと方向性を探っていく、ということに重点があった。

いままでだって、IPVが性の健康に大きな影響を及ぼすことは心得ていたが、今日のトレーニングによって、IPV/RCと性の健康の関係が自分のなかでもっとつながって、カウンセリングをより意義のあるものに再構築できそうな気がした。

まだ言葉でうまくまとまらないけど、ともかく、今日のトレーニングは今までのいろいろなトレーニングの中でもピカイチであった。

2011年11月29日火曜日

運動不足

朝、星空のもとバスにのって出勤し、帰ってくるころにはもう夕暮れ。暗ーーーーーーーーい!

暗さを言い訳に最近ぜんぜん走っていない。始業時間は8時だが、7-8時の1時間に仕事をちゃっちゃかやると随分進むのでこれはしばらく続けるとして、帰りの居残りをやめなくては。真っ暗になるまえにちょっとでも走りたい。闇の中で、光るタスキをかけて走るのは楽しくないから。

2011年11月28日月曜日

ワシントンDCでのThanksgiving

24日はThanksgiving (感謝祭)の祝日だった。職場はThanksgiving とその翌日が休み。日本からとまとまんが来てくれて、ワシントンDCで連休を過ごした。

ワシントンDCはとまとまんにとっても私にとっても初めての町。見るところがむちゃくちゃ多く、とても4日間では制覇できず。天気に恵まれて、雲ひとつない晴天の中をてくてくと歩いたのが一番の思い出。足は棒になったけど。

日本からピッツバーグに来るには、必ずどこか(シカゴ、ワシントンDC、デトロイトなど)で乗換えをしないといけないけど、今回とまとまんは成田ーワシントンDCの直行便を使えたので、移動はちょっと楽だった模様。ただし四国ー成田の移動は変わらずあるので、帰り成田についてからも家に着くまではさらに長い道のり。とまとまん、おつかれさまでした! 一方私のほうは、ピッツバーグーワシントンDC間は250マイル、車で4時間の距離なので、たいしたことなし。

今朝は6時半まえのバスに乗り、7時にはオフィスで仕事してた。残業はしないはずだったけど、1時間した。頭煮詰まったので、切り上げた。また明日からがんばろう。

2011年11月21日月曜日

乳がんという結果を伝える

今日は30歳代の患者さんに他院で先日行われたバイオプシー(組織診)の結果が乳がんであったことを電話で伝えなければならなかった。引きつづき、患者さんが治療を受けられるように Breast and Cervical Cancer Prevention and Treatment (略してBCCPT) program へ申し込みの手配。患者さんが治療を希望している病院の乳がんセンターに電話したときは4時を微妙に過ぎてしまい、コーディネーターと直接話ができなかったのが悔しい。

乳がんという結果を電話で伝えるのは抵抗があった。もっとも電話で「結果を聞きに来てください。」とだけ言うのも酷ではあるが。

願わくば、明日中に乳がんセンターのコーディネーターと密に連絡を取り合って、外科医との初診の予約も確定させて、患者さんに少しでも心穏やかに(難しいだろうが)感謝祭の週末を送ってもらえるようにしたい。

2011年11月20日日曜日

子宮内膜組織診の検体をとるコツ

子宮内膜組織診というのは、子宮体がんの可能性を否定するために行う検査のことで、子宮口から細いストローのようなチューブを入れて、子宮内膜の組織をサンプリングする。

このとき、使い捨てタイプのプラスティックのチューブを使用しているのだが、このチューブを冷凍しておくと、プラスティックが硬くなって、子宮口からの挿入が楽になるということを教えてもらった。まだ実行していないが、これはぜひやってみたいと思っている。

フローリング工事、ようやく終了

7週間以上かかって、ようやくアパートのフローリング工事が終わった。最初は土日2日だけで終わるという話だったが、これは全くウソッパチだった。大家さんは悪くなくて、作業を請け負ったおっちゃんの適当さ、いい加減さの結果である。7週間ずっと作業していたわけではなく、むしろおっちゃんが来なかった日々のほうが大多数。

台所から始まって、廊下、リビング、最後にベッドルーム。この1ヶ月はベッドルームを作業のために開けて、リビングルームで狭苦しく過ごした。間取り上リビングを通らないとベッドルームに入れない。おっちゃんが日中作業するあいだリビングを行き来するので、必然的にリビングにもおがくずやホコリが積もる。

家中に散ったおがくずとの戦いが大変で、床がきれいになった喜びを味わう余裕はこれまであまりなかった。昨日徹底的に掃除をして(天井からブラインドまで拭きまくり)、家具を元の位置に戻すことができたので、ようやくフローリングのありがたみを少しずつ感じてきている。

犬のおしっこの臭いとも、これで完璧にお別れ。さいなら~~

2011年11月13日日曜日

立て直しの日曜日

つい先日まではこんな感じであざやかな紅葉が楽しめたけど、、、だんだん晩秋感が増してきた。葉っぱの色もそうだけど、空の色も。
先週末はNPカンファレンス、この週末は植樹会など2週末続けて慌しかった。今日はリカバリーのための1日。

昨夜は12時間寝た。(よく寝れるもんだ。)

朝とまとまんとご飯を食べた後は、走って(上の写真をとりながら)、洗濯、アイロンがけ、買い物、料理(今週はちゃんとおかずのストックができて安泰)、とまとまんと再びご飯(あちらは朝ごはん)、そのあとコルポスコピーの勉強。あと1日予備日がほしいが、仕方ない。。。今週の仕事は、5日のうち3日は違うオフィスに行く。しっかり寝ておこう。

追記:10月31日付け以降の日記に、ちょこちょこ写真を足したので、よかったら見てみてください。

桜の植樹会&歴史センターでの演奏

ピッツバーグさくらプロジェクトによる、秋の植樹会に昨日参加した。桜の木をはじめ、30-40本の木を植えた。最終的に何本だったのか不明。

穴は大まかに掘っておいてくれているけど、深さは調整する必要がある。根を覆っている網(?)やワイヤーの上部をはずしてから木の根を穴に埋め、土をかける。鹿よけ(木の皮を剥いで食べてしまう)のため、プラスチックの硬いネットを幹に巻きつける。幹を中心にしてまわりに3本の棒をたて、各棒と幹を紐で結び、支えとする。そのあと水をたっぷりやり(ホースまたはバケツで.バケツの水は超重い。)、最後に堆肥を2袋(どでかくて、これまたかなり重い)をかけて終わる。

100人くらいは来ていただろうか?最後にカップ麺(私は蕎麦)をいただいてから、おしゃべりの暇もなくAさんとAさんの息子さんと Heinz History Center に直行。ここで、Heritage Holidaysというイベントが開かれており、ここで「日本歌曲を歌う会」の皆さんが日本の歌を披露。私はバイオリンで歌の旋律を弾いて音量をサポートする係。上半身は車の中で着替えたが、ズボンだけは更衣室で履き替えるはずだった。が、結局時間がなくて、結局下半身はドロ汚れのついたジーンズのままで演奏した。あはは。ちょっとフォーマルな上半身に、膝に穴のあいたジーンズはかなりミスマッチ。そこまで他人は見ていなかったらいいけど。

帰ってきて、ばたんとベッドに倒れた。そのまま一晩寝る勢いだったが、とまとまんを起こすという役があったので、なんとかのっそり起きて、スカイプの向こうの とまとまんとご飯を食べてから寝た。

2011年11月4日金曜日

ペンシルバニア州NPのカンファレンス

Pennsylvania Coalition of Nurse Practitioners のカンファレンスがここPittsburgh の Station Square で開かれている。むちゃむちゃよい。去年はHarrisburg、おととしはErie で開かれていたのを知ってはいたが、1人で行くガッツにやや欠けていて行かなかった。なんてバカなことをしていたか、と今さら後悔。

460人あまりのNPが州内各地から来ている。製薬会社・大学などのスポンサーも51あり、それぞれブースを出してくれている。この活気は、昨年カリフォルニアで参加したNPWHのカンファレンスに匹敵するものがある。

基調講演は、NPらAPRN(高度実践看護師)の教育やライセンスに関するコンセンサス・モデルの話。簡単にいうと、APRNの役割、養成プログラム、また実践活動について共通したモデルを設けることで、患者さんに対するケアの質や患者さんのアクセスの改善をはかり、また願わくば全米どこでもAPRNが自律的に働けるようにしようという大きな動き。今はある州ですごく独立して働いていても、別の州に移ったらその州のライセンスを取るのに一苦労、さらに医師との契約が必要だったり不要だったり、州ごとの格差も大きい。

おやつの後、ひきつづき自分が選んだクラスへ
1時間目、過敏性腸症候群の話: 非常に刺激的。「婦人科」的な頭から脱却して、こういうエリアを深めるのが私の課題だ。

2時間目、がんスクリーニングガイドラインの話: アメリカがん協会のガイドラインのみをもとにしていた。あまり新しい話はなかった。

お昼ごはんを急いで食べ、宝くじチケットをボランティアの1人として売る。(明日発表される当選者には500ドルもらえる。残りはこの会の運営費にまわる。)

3時間目、雑誌などに投稿するうえでの心得の話: 専門雑誌の編集をやっているNPが講義をしてくれて、書いて発表することが全く初めての人にも、どこから手をつけてよいか、何に気をつけなくてはいけないか、などのコツを教えてくれた。

4時間目、PAとNPの共通点や相違点についての話。PAについてよくわかっていなかったことがいろいろわかってよかった。

5時間目、肥満治療手術の話。肥満治療手術後の患者さんには多くはないが時々出会う。今日の話は手術やその前後のカウンセリングに深くかかわっているNPの話だった。肥満は病気であり、肥満という病気がさらなる病気を招く、とか、BMI40以上(あるいはBMI35以上で糖尿病などの疾患を伴っている)場合には肥満治療のための手術は選択肢としてオファーされるべきだ、という話は過激に聞こえなくもない。が、減量を成功に導くためのツールのひとつとして、手術に大きな意義があることは理解できた。手術すれば必ずやせられるわけではなく、こまめなフォローアップと患者さんのたゆまぬ生活習慣改善あってこそ、体重管理は成り立つ、というところがとても興味深い。

6時半からは夕飯を食べながらのクルーズ。今日は快晴で雲ひとつなく、夜景もすばらしかった。遠くからピッツバーグに来ているNPたちはみんなピッツバーグにfall in love したに違いない。

NPがNPとして本領を発揮できるように州議会でのロビー活動などに努力をおしまない理事会メンバーも、大学で教えているNPも、臨床で働くNPも、みんな混じってお茶目に踊った。
明日のプログラムも楽しみだ。

2011年11月3日木曜日

刑務所における性感染症管理

来週水曜日9日に、刑務所における性感染症管理についてのウェビナー(ウェブ上のセミナー)があるようだ。主催はCDC。私はこれを知ったのがたった今。たぶんもう患者さんの予約が入っていて参加できないと思う。でも、非常に関心がある内容。刑務所で働いているわけではないが、過去に刑務所にいたことのある患者さんとは割と頻繁に出会うし、パートナーが現在刑務所にいるとおっしゃる患者さんにも時々会う。
ウェビナーの申し込みはこちらから。

妊婦への百日咳ワクチン接種

赤ちゃんにとって、百日咳は命取りになる感染症だ。アメリカでは2004年以来、毎年平均3055人の赤ちゃん(12ヶ月未満)が百日咳にかかり、うち19人がなくなっているそうだ。百日咳の予防策はワクチンが一番だが、赤ちゃんがこのワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風の混合ワクチン)を受けられようになるのは生後2ヶ月からで、その前に百日咳に感染してしまうと痛い。

ゆえに、生後まもない赤ちゃんの百日咳を防ぐためには、周りの人が積極的に百日咳・ジフテリア・破傷風ワクチン(Tdap)を受けるべし、とCDCの予防接種に関する諮問委員会(ACIP)が発表した。

この中で特筆すべきことは以下の2点。
1.Tdapを過去に受けたことのない妊婦に対し、妊娠20週以降にTdap の接種をすすめている。また、10年に1回受けるべきとされている破傷風・ジフテリアワクチン(Td)の追加接種からすでに10年経過している妊婦に対しても、妊娠20週以降にTd よりむしろTdapを受けるように推奨している。これは母親が感染しなければ赤ちゃんにも移らない、という論理のみならず、系胎盤的に母親の抗体が胎児に移行することを期待しているようだ。「産後」の母親への接種ではなく、妊婦にあえて接種を勧めているところが、英断というか、ACIPの強い意志を感じる。

2.赤ちゃんのそばで過ごすことになる母親以外の人々(父親、きょうだい、祖父母、保育園の職員、医療関係者)でTdapを受けていない人は、なるべく赤ちゃんと接触する2週間前までにTdapを受けるべし、と勧めている。これは、赤ちゃんの周りのひとが誰も百日咳にかからなれば、だれも百日咳を赤ちゃんに持ち込まないですむから。

なお、今回の推奨事項は諮問委員会ACIPによるものであって、まだCDCそのもののガイドラインにはなっていない。

乳がんと避妊

40歳代前半のAさん。昨年のannual exam のときにマンモグラムを勧めたが、結局今年のannual exam で再会するまでに受けていなかった。私が受けることのメリット、受けないことのデメリットを話してみたところ、「はい~~~、今年は行ってみますよ。。。」としぶしぶ納得。これが大体2ヶ月まえの話。

結果、乳がんが見つかった。触診上の所見も自覚症状もまったくない段階で、スクリーニング・マンモグラムを受けたからこそ発見できたがんである。

Aさんは、長年デポ・プロベラ という注射タイプの避妊薬を愛用してきた。3ヶ月に1回、規則正しく注射を受けにみえた。骨量減少のリスクを考えると、何年にもわたってデポ・プロベラを使い続けるのはよいことではないのだが、Aさんはあえてこの方法を選んできた。注射さえ受ければよいという簡便性と、月経がほとんど来ないという点が、彼女の何よりのお気に入り。

そもそも、年齢(35歳以上)とタバコを吸うことを鑑みると、エストロジェンを含む避妊薬は禁忌。(血栓や心血管疾患のリスクが高くなるから。)したがって使える方法としては、デポ・プロベラのほかプロジェスティン単剤のピル、インプラノン(皮下埋め込み型の避妊薬)、子宮内避妊具、コンドームやペッサリーなどのバリア法、あるいは思い切って不妊手術などの永久避妊、というように限られる。

さて、一旦乳がんと診断されると、デポ・プロベラなどの女性ホルモンを含む避妊薬は使えない。ホルモン系避妊薬が乳がんを発生させるわけではないが、女性ホルモンに敏感な乳がんの進行を早めてしまう危険があるからだ。

そういうわけで、今回の避妊カウンセリングは、
  • バリア法(コンドーム、ペッサリー)、
  • 子宮内避妊具(銅付加IUD パラガード)
  • 永久避妊法(卵管結さつ、ESSURE、男性不妊手術 など)
の3本にしぼられた。

相談の結果、Aさんは子宮内避妊具、パラガードを希望された。

今回の受診に至るまでには、予約→ 予約変更 → 予約日に現れず → 再度予約 → 予約日の前日に日にちを間違えて来られたがこちらが受け入れる、 という変遷があった。おそらく、ま、これは想像の域だが、外科医への受診、別の病院でのセカンド・オピニオン受診、手術日の決定、などAさんにとって物事が目まぐるしく動く中で、かなり困難や動揺があったためでないかと思う。

本当はパラガードの処置まで終わらせる時間があったらよかったが、今回は選択肢の相談だけで時間切れになってしまい、また日を改めて行うことにした。Aさんにはあらかじめパンフレットを郵送していたので、1から10まで説明する必要はなかったのだけど、納得して決める、という作業にはやはり時間がかかった。