2013年11月1日金曜日

出産時の瘻孔をとりあげた映画

しばらく前のことになるが、分娩時の損傷による瘻孔(ろうこう、つまり穴)、obstetric fistulaを取り上げた映画、『A Walk to Beautiful』のDVDを観た。 http://www.walktobeautiful.com

映画の舞台はエチオピア。小柄な体にして早いと10代半ばにして妊娠した女性たちがいざ出産を迎えたとき、赤ちゃんの頭が膣に何十時間、ときに何日も停滞するような難産に陥ってしまうことがある。膣の壁が赤ちゃんの頭に圧迫され続けた結果、壁の一部が破壊されて膀胱あるいは直腸とつながる「穴」ができてしまう。これが産科瘻孔。

赤ちゃんの頭の回旋異常とか、分娩遷延(時間のかかりすぎている分娩)などの理由で帝王切開ができれば避けられる障害だけれど、エチオピアに限らず医療設備のない環境で出産を迎える女性の多い地域では、残念ながら今も珍しくないようだ。

この瘻孔を通して、膀胱からは尿が、直腸からは便が勝手に膣に流れ込んでしまうため、生活に支障をきたす。加えて、便尿のにおいや性生活の不便さなどから、パートナーや家族から追放されて社会的にも精神的にも参っている女性たちの姿を映画の中で見た。

希望は、外科的な手術や膀胱機能の訓練などで、回復の余地がおおいにあるということ。田舎の村から徒歩とバスで何時間もかけて病院(産科瘻孔を専門に扱う The Fistula Hospital が首都アディスアベバにある)に行き、そこで治療を受けてはちきれんばかりの笑顔で帰って行く女性たちの姿はとても輝いていた。

The Fistula Hospital で献身的に働いている医療者たちに頭が下がる。将来的には、願わくば、産科瘻孔にいたらなくて済むような一次予防(たとえば栄養状態の改善、若年妊娠の予防、医療アクセスの整備、異常分娩時に帝王切開ができる環境の整備など)をするのが一番だと思うのだけど、限られた医療資源や交通の便を考えると、理想ばかり言っていられない厳しい現実がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿