2009年3月2日月曜日

パートナーによる暴力

暴力を経験する女性はとても多いので、すべての患者さんに私は尋ねるようにしているんですが、 
Since violence is so common, I ask all women if she has experienced violence.
と口火を切って、

お家にいるとき、またパートナーと一緒にいるとき、あなたは身体的にも精神的にも安全ですか?  
Are you physically and emotionally safe at home and with your partner? 
と質問する。

は? 何を聞いてるん? という感じの反応のときはおおよそ問題ないだろう。

より具体的には、
これまでの交際関係で、殴られたり、蹴られたり、首を絞められたり、そのほかの方法で苦痛を与えられるような経験はありますか。 
Have you ever been in a relationship where you have been punched, kicked, choked or hurt in any way?
とダイレクトに聞く。

だれかに不適切に触られたり、セックスを強要されたことはありますか? 
Has anybody ever touched you inappropriately or forced you to have sex?

という質問に対し首を横に振りはじめた患者さんに、as child? 子どもの時は? と加えて尋ねると、実は・・と話が出てくることもよくある。

親しいパートナーからの暴力、intimate partner violence について尋ねたか、その結果はどうだったかをカルテに記録することは、大事なルティーン項目のひとつとされている。(だから聞くってわけじゃないけれど。)簡単なスクリーニングの質問で、あまりに"yes" という答えが多いのは、非常に悲しい。

患者さんが未成年で、かつ加害者が親などの保護者の場合、医療者には通報の義務があるが、すでに成人だったり、未成年でも保護者以外が加害者だった場合には、患者さんが希望した場合のみ、関連機関につなぐことになっている。たとえずっと以前の経験だったとしても、専門家のカウンセリングを通してケアを受けることが望ましい、とティーナはいうけれども、実際は、「別に今さらいいです。」と話す患者さんも少なくない。ごく最近の出来事であっても、「私は警察も信用してないし、行動を起こすことが余計に事態をややこしくするから、何もしなくない。」と言う患者さんもおられる。

患者さんに自ら質問をしたからには、その回答を受け止めるのもまた自分。非常にセンシティブで重い問題。暴力の経験「あり・なし」の単純なチェックでは済まされない。他のリソースにつなぐかどうかは別として、その場でひと通りの話の区切りをつけなくてはいけない。「打ち明けてくれてありがとう。あなたはひとりではないですよ。」から入って、選択肢の提案etc.

決して興味本位で尋ねているのではなく、暴力は人間の健康に多大な影響を与えるので敢えてお聞きするのですーーという真意が患者さんに伝わるように、そして質問したことがよりプラスの方向に向かうきっかけになるようにもっていきたいーーーそう思っているけど、どこまで出来ているか。

「パートナーが浮気して、彼(彼女)から性感染症をうつされるのも、立派な暴力よ。」とティーナ。本日の名言。

4 件のコメント:

  1. よくぞ書いてくれました。
    この聞き方とかもめっちり勉強させられましたよね。

    アメリカでは、大学卒業の時点で女性の20%が性的な暴行を受けていると聞いて、アメリカって怖いな〜と思ったのですが、よく見ると触られるのも含まれている。ので、痴漢もあり。
    ってことは日本は95%くらいかも?!と思って青ざめたことがあります。

    あと、もうひとつ、患者さんが、「実は。。」と言った時には、私は「その人は、家族の一員でしたか?」と聞きます。そうすると殆どの場合、うなずきます。
    叔父や、義父の場合によるものが多く、その答えによっては家庭の姿が見えてくることもあるからです。また、家族での性犯罪が多いのか、と患者が感じ、自分の経験が特殊なものではないと分かってくれる利点もあります。

    しかし、残念なことですね。

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  2. 地域によるところはあると思うけど、ショックな話やね。
    だけど、これは事実だし、解決せねばならない問題。少しずつでも解決に向けて貢献していきたいね。

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  3. たしかに、親戚や親の友達など、身近な人から性暴力を受けたことのある人はとても多いですね。

    幼いときの体験だったりすると、「あのとき、触られただけなのか、それともintercourse にいたったのか、自分でもわからない。私って、バージンなんでしょうか? 彼に聞かれたら、どう答えたらいいでしょう?」と患者さんが尋ねてくることもあります。

    「そういうときは、『You are the first person I chose to have sex. (あなたは私がセックスをしたいと思った初めての人です。)』と答えたらいいって言ってあげたらいいのよ。」とティーナ。

    ティーナから日々学ぶこといっぱいです。

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  4. ディーナ素敵。。。!!

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