2009年3月16日月曜日

「太ってなんか見えないでしょ?」

Body Mass Index、 すなわち 体重(kg)÷{身長(m)の2乗}を使って体重の評価をする場合、アメリカでは
<18.5   は「underweight」 =やせ
18.5~24.9 は「normal weight」=標準
25.0~29.9 は「overweight」  =過体重(?)
30.0以上  は「obese」    =肥満
ということになっている。日本では日本肥満学会の解釈によって、BMI=25以上で肥満と見る。

国民の3分の2が overweight もしくは肥満のアメリカにおいて、自分が太っているという自覚を持つのは、しばしば難しい。いくら太ってますねと言われても、周囲には標準体重の人より太った人が多いのだもの、「わたしが太ってるだって? んなわけないでしょ。」とおっしゃる患者さんがいるのも、無理はない話だ。日本だと、太ってしまうと、着られる市販の服が目に見えて減っていくので、「こりゃ、やばい!」と思わざるを得ないが、アメリカにはいくらでも大きなサイズの服があるので、洋服を買うのにも困らない(だろう)。「XL(エクストラ・ラージ)」の上にも2XL、3XL、4XL、、、がある。

仕事の合間に読んでいたNP向け雑誌の記事に、医療者が体重コントロールに関して十分取り組まない背景には、時間がたりない、保険会社からのペイが足りない、カウンセリングするのに十分な技術がない、患者さんがやせられるだろうという確信がたりない、リソースがたりない、、などの要素が挙げられていた。急性期の問題にはしっかりフォーカスして対応するが、太りすぎという、慢性的な問題は後回しにしがち、というコメントには、確かにー、と思った。

肥満は今すぐ問題にならなくても、徐々に高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病、がん、睡眠時無呼吸、変形性関節症などなどのベースとなっていく。クリニックに来られる患者さんの中には、プライマリケアを担当する主治医を他にもたない患者さんも多いので、例えば今日私が担当する健診が1年で唯一の医療機関への受診ということだってある。そう思うと、どうしても体重のことに触れないではいられない。限られた診療時間の中でもたもたしちゃいけないし、でも「はい、問題ありません。」と終わりにするのはウソつきになるし、時間との戦いだ。肥満ですよと言ったところで、今日何かが変わるわけじゃぁないが、自分の体重を知らない患者さん(結構多い)に去年は何ポンドで、今日は何ポンドでしたよ、これはBMIでいうとoverweight・肥満ですよ、と伝えることは、ささやかながら続けていきたい。今まで健康で来れたし、これからも健康でハッピーに生きられるように、ちょっと体重に気をはらってみましょうよー、というポジティブなメッセージとして伝わるといいんだけど。

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