2010年1月15日金曜日

見逃される肥満

かかりつけ医のいる患者さんでも、医者に行くのは風邪がひどくなってどうしようもないなど、問題のあるときのみの方が少なくない。「かかりつけ医(primary care provider)はいますか?」 と尋ねると「はい」と答えが返ってくるが、「ではあなたのPCPはあなたの体重についてどのように言っていましたか?」と聞くと「別に~~」という答えが珍しくない。(BMIが40台、50台の患者さんであっても。)風邪などの「主訴」だけにフォーカスした診察だと、そうなってしまうのだろう。

わがオフィスはもともと家族計画に関する事業を中心にやってきたので、annual exam (1年に一度の健診)も婦人科にフォーカスした内容である。プロトコル上ではプライマリケアをやることがあまり求められていない。期待されていない、というか。

でもNPたるもの、BMI40台、50台の患者さんを前に、annual exam で何もそれについて触れなかったら罪だと思う。でも時間がない。出来ることには限りがある。じれんま。

もちろんPCPに受診できる状況にある患者さんには、ぜひ受診するように進めるが、PCPに行く余裕がない人も少なくないわけで、そういうときに自分がもう一歩踏み込んで介入できたらいいのだが(例えば糖負荷試験やコレステロール値の検査をオーダーしたり、生活習慣の改善についてカウンセリングするための再診など)それはわが組織のscope of practice を逸脱してしまう。

同じ組織で働くNPでも、プライマリケアに関心はないわ、とはっきり言う人もいる。そういう人は割り切っているから、ジレンマはないだろうと想像する。

morbidly obese (病的肥満)な患者さんがせっかくあちこち医療機関を受診しても、どこでも肥満への介入がなかったら、患者さん本人に明らかな不快症状がでてきてそれが「主訴」となるまで放置しているということに等しい。これは悲しすぎる。いよいよ不快症状がでてくる頃には、心血管系から膝から腰から、ありとあらゆる健康問題のカタマリになってしまっていても不思議はない。

どうしたら自分の限られた診察時間のなかで有効なかかわりが持てるか、欲張りだけどもっと追求したい。それから、保険のない、あるいは保険はあっても不十分な患者さんがプライマリケアを受けにいけるリソースがないのか探したい。

3 件のコメント:

  1. 小芋さんのジレンマに共感します。私はがん患者さんのがんの部分だけを診るように期待されていますが、合併しているDMなどの良性疾患のコントロールがされていないと、同じようなジレンマを感じます。でもscope of practiceだと割り切って、専門のがんの部分だけでも完璧にフォローする!と思うようにしています。

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  2. 身近に、プライマリーのFNP/ANPいませんか?

    NPのネットワークて必ずあると思うので、そういうところで予防医学に興味ある(NPは特にそういう分野とくいでは?)NPと知り合いになり患者を紹介するというのはどうでしょうか?その後の経過もお互いにコンタクトを取れるようにしておけばトータルにチームで診れますよね?

    保険の無い人用の無料クリニックもあるだろうし、保健所はそういう人でいっぱいですよ。

    もし、私がこいもさんの近くで診療していて、こいもさんから患者さん紹介してもらえたらすごいいいのにな。そしたら、そういう慢性病は得意だし、女性疾患においてはこいもさんにお任せして女性患者はトータルに診てもらえるのにな。

    気軽にコンサルトしてもらえる関係の専門家がいるととても強みになります。私も発掘にはげまなきゃ!

    かえる

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  3. いこさんのコメントを呼んで、健康的な割り切りの気持ちが必要だなぁ、と思いました。

    かえるさんのおっしゃるような地元のリソースを探していきたいです。

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