2009年2月4日水曜日

アーミッシュ女性の健診

アメリカ北東部、とりわけペンシルバニア州には、アーミッシュ(Amish) と呼ばれる人たちが住んでいる。18世紀にヨーロッパから移住してきた時代とほぼ変わらない、信仰を重んじた伝統的な暮らしをしている。電気や自動車を使わず(普段は馬車。バスなどに乗ることはあっても、自ら車の運転はしない)、自給自足の生活が基本。質のよい卵や野菜、牛乳などの乳製品、丈夫な家具や美しいキルトなどは、アーミッシュ外の一般人の間でも高く評価されていて、アーミッシュの人たちにとっては貴重な現金収入源にもなっている。

クリニックの仕事のひとつに、2ヶ月に1度、アーミッシュの女性を対象とした健診に出向く、というのがある。アーミッシュの人が多く住む町に私たちスタッフが出張し、その町の保健センターのようなところの診察室を借りて、診察をする。今日はじめてその日が来た。ティーナと、アシスタントのジュリーと、私の3人で向かった。保健センターには、州の保健省のナースも3人来ていた。彼女たちの中には、普段からアーミッシュの家庭を訪問している(子どもたちの予防接種のためなど)人もいて、患者さんの家族背景をよく知っていた。彼女たちの宣伝効果によって、このような健診の機会を知ることになった患者さんはきっと少なくないだろうと思う。

アーミッシュの人たちは、健康保険に入っていないのが普通ということだが、子宮がん検診とマンモグラフィーを含む検診は、州政府のプログラムによって無料で受けられる。患者さんの利便性を重んじて、私たちが診察したあとに、廊下の奥の部屋でマンモグラフィーを受けられる。待ち時間もとても短い。冬は天候によって、来られない患者さんが多いとのことだったが、今日は雪降る中でも予約の通り来て下さった方がほとんどだった。

アーミッシュ同士ではPennsylvania German もしくは Pennsylvania Dutch とよばれる古きドイツ語を話すそうだが、英語も全く問題なく話せるので、コミュニケーションで困るということはない。とてもやさしい人たち、という印象をもった。そうティーナに言ったら、「本当にやさしい、気持ちのよい人たちよ。でもね、彼女たちはとても男性主導の世界にいて、不満を口にしたくても言えない環境にいるという面もあるのよ。心の病に悩んでいる女性も少なくないし、DVもある。」と。たしかに、抗うつ薬を服薬している患者さんが今日半日のあいだだけでも数人いらした。

ご本人、もっといえばアーミッシュの女性一般は、タバコもお酒もやらないのに対し、男性陣は喫煙(パイプ)もお酒もOKということになっているようで、受動喫煙に悩む声が聞かれた。

次回(2ヵ月後)からのアーミッシュ・コミュニティーへの出張は、私とメディカルアシスタントの2人で行くことになる。診察の内容は、項目的には普段と何も変わらないけれど、自分がアーミッシュの人の生活・文化背景を知らなかったら気づきのアンテナに何も引っかかってこないと思う。かといって、一般的雑学だけ増やして、judgemental (決め付け) になってもいけない。いずれにしても、さらから学んでいこう。


アーミッシュについて興味ある方へ。ウィキペディアで概略が読めます。
(日本語のサイト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5
(こちらは英語のサイト。写真は日本語サイトより多い。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Amish

3 件のコメント:

  1. とても貴重な体験ですね、私にとっても勉強になりました。

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  2. いいところ、悪いところがあるね。いいとこどりになるといいのにな。

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  3. ニューオーリンズにいたとき、若いアーミッシュの男女が自主的にボランティアにきていたのが印象的でした。そちらでは実際に彼らとコミュニケーションがとれる経験ができていいね。
    Y

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