2009年7月18日土曜日

カウンセラーのカウンセリング

今回私が参加したHIVカウンセリングの研修会は、カウンセリングというとてもクリエイティブな作業を3日かけて学ぶ非常に贅沢な時間だった。一方的に講義を聴く形ではなくて、9人全員または2-3人の小グループに分かれてディスカッションやロールプレイをやる場面が多かった。巷では「あの研修会は退屈」と言われているそうだが、私にとってはHIVに限らず患者さんとのかかわりすべてに通じるメッセージをたくさんもらう機会になった。

3日目は予定よりも大分早く終わった。私はまだもうちょっとロールプレイで練習したくて、講師に頼みこんで個人的に時間を取ってもらった。というのも、せっかく学んだことを激忙しい現実場面でどう実現させたらいいか、まだ十分見えていなかったから。悲しいかな、HIVを含む性感染症のスクリーニングの予約に確保されている時間は、ほかの種類の診察にも増してわずかなのだ。

講師はロールプレイの相手をしてくれただけでなく、私が置かれたクリニックの状況の話も聞いてくれた。「私たち(ナース同士)は支えあうものなのよ。」と。なんと心強い。

講師との個人的セッションのなかで、やっと納得できたことは:
1.同じ内容を聞く質問であっても、あえてopen-ended question (はい・いいえで答えられない形の質問)で聞くほうが、一見時間がかかるように見えて、本当は多くの情報を集められる 
2.情報や選択肢を提示するまえに、患者さんにそれらについて考える質問を投げかけるべし――患者さんが自分で考えて出してきた答えは、カウンセラーがぺらぺら語る言葉よりもずっと価値がある――患者さんに全くアイディアが思い浮かばないようだったら、そこで初めて情報や選択肢を提示する――そのほうがずっと患者さんのこころにすっと入る

診察時間の短縮ばかりを目指して診察をすると、患者さんとのやり取りは非常に機械的になって、誰に対しても同じ質問やコメントをまるでセリフのごとく述べざるをえない、と少なからず私はおもっていて、だからこそストレスがたまっていた。open-ended question を下手に使いすぎると話が広がりすぎて、厄介なことになるとも思っていた。だけど、今回の研修を受けながら思ったことは、私が「正しい」コメントをしたところで、患者さんの役に立たねば意味がない。私はあくまで、患者さんがどうしたいのか、それをどうしたら実現できるのか、患者さんに考えてもらうきっかけとなる質問をする人。情報はここぞというときだけに持ってくる。

もちろん、closed question (はい・いいえで答えられる形の質問)で尋ねなければしょうがない質問もあるし、際限ないopen-ended question を繰り返して 禅問答のようになってもいかん。要領をわきまえないといけない。

翌金曜日、意識して患者さんへの質問のスタイルを変えてみた。これがことのほかヒット。(けど一瞬止まって、open-ended question にするのは簡単ではない。) むっちゃ頭を使うが、おひとりおひとりの患者さんの状況に合わせた話の展開になる。それはこうしたらいいんですよ、と言ってしまいそうになる場面で、あえて患者さんにアイディアを聞く。患者さんのなかにすでに答えがあったり、なかったり。それに応じて私が次に言うことも自ずから変わってくる。講師が言っていた exchange ideas とはこういうことか、と思った。

今回の研修会で学んだことは、自分にとって飛びきり新しいことではなくて、むしろ大学の基礎看護学の演習や、エモリーのヘルスアセスメントの演習をはじめとしていろんなところで習ってきたこと。けど、いま改めて勉強することで、もっと(やっと?)身になる感じ。

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