2009年10月4日日曜日

元気なときの年次健診(検診)を!

日本はいわゆる病気に関しては健康保険が使えますが、病気でない状態、すなわち予防に関しては健康保険が基本的に使えません。ですから、アメリカの医療機関でいうところの annual exam (年次健診)という形でかかりつけ医にかかる機会はなく、医者に行くのはたいてい何か問題があるときですよね。

健康診断は、職場で受けるか、あるいはがん検診の制度を利用して体のパーツごとにうけるか、もしくは自費で人間ドックにいくか、などになります。

となると、主婦や主夫が定期健診を受けるチャンスがなかなかないことになります。よほど健診・検診好きで、人間ドックに数万円払ってもいいよ、という人でもなければ。子宮頸がん検診を除くと、老人保健法の定めている基本健康診査(40歳から)やがん検診(胃・肺・大腸・乳がん、いずれも40歳から)が始まるまで、検診・健診の機会がありません。この間妊娠でもすれば、子宮頸がん検診や血液検査の機械に恵まれますが、下手すると、ずっと医療機関にかかる理由も機会もない人もいるでしょう。

アメリカでは、18歳以上の女性で 生涯一度でもpap smear を受けたことのある人は92%、
過去3年以内にpap smear を受けた人は79%だそうです。(1998時点。Healthy People 2010 より)健康保険がない人も少なくない中で、このデータは私には驚きです。

一方、日本では子宮頸がん検診の受診率はおよそ2割。子宮頸がんに限らず、ほかのがんの検診の受診率も似たり寄ったりのようです。
http://www.gankenshin50.go.jp/campaign/outline/low.html
数カ国との比較もこちらのサイトにありました。

さて、
アメリカでの子宮頸がん年齢調整罹患率は、8.2、年齢調整死亡率は2.5だそうです。(2002-2006)
http://seer.cancer.gov/statfacts/html/cervix.html

一方日本のデータを見ますと、年齢調整罹患率(2003)は11.3、年齢調整死亡率は2.5(2007)です。
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/statistics/statistics.html
数でいうと、毎年8000人ほどが頚がんになって、2400人くらいが亡くなっているというデータです。しかし、日本のある婦人科医の話によれば、この数字は少なすぎで、4000人くらいは亡くなっているだろうと考えているそうです。日本全体でのがん登録がなされていないので、誰も正確な数はわからないけれど、日本産婦人科学会のなかの、婦人科腫瘍委員会に登録される患者さんは、毎年9000人以上いるそうです。

こうしてみてみると、日本が米国と比べて極端に子宮頸がんの発生が少ないということはなく、むしろ同じか より多いかもしれません。

日本も、予防に力を入れるべく、例えば乳がん・子宮頸がんの無料クーポン券を始めるなどという動きがあります。こういうキャンペーンで検診率増加を目指すのは歓迎ですが、こういう体のある部分部分の検診だけではなくて、かかりつけ医に病気でないときに年次健診をしてもらえる仕組みも、ぜひ検討してほしいと思います。ちゃんと家族歴・既往歴を聞いて、患者さんひとりひとりの異なる事情を反映したスクリーニング検査をしないと、不十分だとおもうのです。問診から浮かび上がってくるリスクファクターの有無や程度によって、患者さんに必要なスクリーニングテストの種類や頻度が変わってくることもあるからです。

年次健診は、病気の早期発見のためだけでなくて、病気にならないための健康教育の機会としてとても大事です。NPのような役割の職種が日本で取り入れられるとき、年次健診を含めた予防活動にもお金がついて、病気にならないことに力をいれる制度になってほしい、と願います。

0 件のコメント:

コメントを投稿