2009年8月14日金曜日

避妊薬のお値段

健康保険がピルなどの避妊薬をカバーしてくれるならラッキーだが、患者さんが健康保険に加入していなかったり、加入していても薬の自己負担額(co-payという)が患者さんにとって馬鹿にならないときは、それら費用も避妊法を選ぶうえで考える重要項目のひとつである。

いちばん安いピルは、Sprintec (Orthocyclen のジェネリック薬)、Tri-Sprintec (Orthotricyclen のジェネリック薬)で、これらはWalmart だと1パック(28錠)9ドルである。Giant Eagle という地元スーパーの薬局だと、それぞれ13ドル、14ドルである。これでもかなり安い。処方箋はどこの薬局に持っていってもいいのだが、患者さんにこれらの情報をお伝えしなかったら不親切である。場合によっては、保険を使ってco-pay (20ドルとか30ドルとか)を支払うよりもずっと安くなるのだから。

Yaz、Yasmin、またジェネリックのOcella というのがある。これらのピルには他のピルとは異なるプロジェステロンが使われている。これが特にお気に入り、という患者さんがときどきある。ところが、メディケイドの保険(Gateway, UPMC for you, Unisonなど)のformulary (保険がカバーする薬のリスト) にはこのタイプが入っていない。今までYaz 愛用者だった患者さんが、メディケイドの保険になったために、泣く泣くほかのピルに切り替える(自己負担で払うと45-50ドルくらいなので)なんてことが珍しくない。多くの患者さんは、ほかのピルに変えてもぜんぜんへっちゃらなのだが、なかには著しい変化を訴える患者さんもいる。

パッチを使ってみたい!という患者さんは少なくない。メディケイドの保険はいずれもパッチをformularyに入れていないので、メディケイドを使っている患者さんには、パッチという選択肢がざんねんながら消える。全額自己負担したら、たぶん1ヶ月分で40ドルくらい。

Nuvaring はメディケイドの保険もすべてformulary に入れてくれているし、低用量(15mcg)だし、使い方が簡単だし(毎日何かするということがない)、連続使用も可能だし(通常3週間on, 1週間offにするところを、4週間連続で使うことで、月経を飛ばすことができる。)、とくに子宮内膜症や子宮腺筋症の人の味方。28錠タイプのピルを使って連続使用をすると、1年間に必要なピルのパック数が多くなってその分自己負担が増えるから、Nuvaring の連続使用は非常に経済的。ただし膣に挿入するタイプのため、患者さんの第一印象はよくないことが多い。(実際には、膣に挿入したあとは、ほとんどの人はNuvaring の存在を感じず、快適に過ごせるんだけどね)

Depo Provera は1回分の費用はそれなりにするが、1回で13週間効果があるので、ピル(種類によるが)3ヶ月分よりはお買い得、という場合もままある。Depo Provera もメディケイドのformulary に含まれている。

Implanon(上腕挿入型避妊具、3年間有効)、Mirena(ホルモン付加IUD、5年間有効)、Paragard(銅付加IUD、10年間有効)ーーーこれら3つは、初期費用は高い(400-500ドル)が、その後はとくに何の手入れもいらないので、長く使えば使うほど1ヶ月あたりのコストは下がる。保険に加入している場合、所得などの条件に応じては費用減免のサポートを製薬会社側が設けていたりするので、あたってみる価値はある。IUDとは、子宮内に挿入するタイプの避妊具のこと。

コンドームと殺精子剤ーーーメディケイドの保険の場合は、処方箋を書くと、保険がこれらの費用をカバーしてくれる。

日本と比べてアメリカは避妊薬の選択肢が多い点はすばらしいのだが、選択肢があっても、保険の加入状況や自己負担額の条件によって、選びうる選択肢が狭くなってしまっていることがままある。せっかく処方しても、薬局が「患者さんの保険はこのピルをカバーしていません。他ので代用できますか?」なんていうファックスを送ってきて、処方をまた変えないといけなかったりすることもある。メディケイド各社のformulary を印刷して手元に置いて参照するようにしているが、それでもいつの間にか改訂されていたりするので、困ってしまう。

一人ひとりの女性にとって、ベストな避妊法は違う。同じ1人の人でも、年齢によって、そのときのパートナーとの関係によって、また妊娠のプランによって、ベストな方法は変わる。飲んでいる他の薬、持っている疾患、そういう条件でも変わる。費用の点を気にしすぎないで、ベストな方法を選べる医療制度が必要だ。でないと、そのしわ寄せは、女性本人だけでなく、赤ちゃん、まわりの家族だけでなく、社会全体に確実にくる。

3 件のコメント:

  1. 避妊薬ひとつでもかなり複雑ですね。薬の作用とか覚えるだけでも大変なのに、保険会社との兼ね合いも知らないといけないなんて、、。専門家が必要になるわけですね。Kiwi

    返信削除
  2. アラバマにはプランファーストという州独自のCare planがあります。メディケア・メディケイドのグラントで各自の州がそれぞれ管轄するものです。多分他の州でも似たようなものがあると思います。

    これだとパッチもリングもたしかIUDもただで処方されます。そして驚くことに卵管結サツ術もカバーされるのです。ただし、Health Dep.に行かないといけないので少し面倒です。そして、このオーダーは一年という期限付きでそれを過ぎると又検診をうけなければなりません。また、これを受けれるのは、19-55歳の収入がPoverty Levelの133%以下という制約つきです。

    でもこうやって計画妊娠を進めていても、計画外妊娠するひと、PrenatalCareを全く行わない人、ERに腹痛できて生んじゃうひと、っているんですよね。メディケア・メディケイドって私たちの税金から出ているのに。悲しいです。

    かえる

    返信削除
  3. Kiwiさん、かえるさん、コメントありがとう。
    ペンシルバニアでもwelfare の患者さんの卵管けっさつ術はカバーされます。卵管けっさつ術は、2度と妊娠したくないという人にはうってつけですが、問題は手術を受けたことを後悔する人が少なくないことです。

    卵管けっさつのやり直しの手術をできないことはないのですが、州は面倒みてくれません。(ただしやり直しの手術をしても、また妊娠できる保証はない。)まして、体外受精の費用などもってのほか。

    IUD や Implanon などの長期タイプの避妊方法がもっと広まるといいのですが。

    返信削除