2016年4月4日月曜日

20代前半の軽度異形成やHPV感染を「見守る」ことについて

もうかなり昔のことだが、子宮頸がん検査のガイドラインが変わって、性交の開始年齢にかかわらず、21歳になるまではスクリーニングの子宮頸がん検査をしない、という方針になったとき、そのコンセプトを受け入れるのに苦労している同僚がいた。

同様に、21-24歳の患者さんが Low grade intraepithelial lesion (LSIL) とか high-risk HPV types を伴う Atypical squamous cells of undetermined significance (ASC-US) だったときに、即コルポスコピーやそれに伴うバイオプシーをせず、12ヶ月待って細胞診をもう一度する、という方針に抵抗感を感じる医療者、また患者さんもいる。

それからhigh-risk HPVの検査が技術的に可能なのに、それをあえて20歳代ではあえて行わないことに不安を覚える患者さんに時々出会う。なんでやってくれないの?と。(ただし30歳代以降の女性には、細胞診と合わせてhigh-risk HPV を検査することが勧められている。20歳代の場合は、細胞診がASC-US でなければ通常あえてHPV検査は行わない。)

これら3つの場面に共通しているコンセプトは、「検査はするが、しすぎない。若い人のHPV感染は頻繁だが自然治癒の可能性も多いので、あえて時間をおいて、変化を見守る。」こと。

様子をみていたら自然によくなる可能性の大きいものに対して、むやみやたらにバイオプシーしたり、ひいては凍結療法やLEEP (ループ状の電気メスで頸管の一部を切除する手術)をしたりして、将来の妊娠や分娩のアウトカムを悪くしては、むしろ悪影響だから。

でも、こういう「見守り」をまるで「放置」と思われてしまったり、やるべきことをやっていない(やってもらえていない)と捉えられてしまうと、とても残念。

研究がすすんでHPVのことが以前よりもっといろいろとわかるようになり、またhigh-risk HPV の検査が広く普及して、これからは細胞診よりもHPV検査により重きをおいたガイドラインに徐々に変わっていくんじゃないかな、と思うけど、その都度、検査や治療の程よいライン(やりすぎでもなく、やらなすぎでもなく)を患者さんの個人的背景・事情も含めて見極めていくことが大事だなぁ、と思う。

現在のASCCP ガイドラインはこちら
http://www.asccp.org/Guidelines/Screening-Guidelines

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