しかし、見方を変えると、彼女はこの1年半の間、頼りになるMirena のおかげで妊娠しないですんだ。1年半も使用を継続できた。
ピル、パッチ、Nuvaring、などの方法はMirena のように処置を必要としないので始めるのは簡便なのだけど、その分継続率はよろしくなく、1年後の継続率はせいぜい5割前後なのである。そもそも処方箋をもらっても結局それを薬局に持っていくに至らない人もいるし、また「使っているつもり」であっても、飲み忘れたり正しく使えていなかったりして妊娠に至ることもある。
その点、Mirena のような子宮内避妊具やImplanonという 皮下埋め込みタイプの方法は継続率が1年後で8割以上を誇る。幸いなことにこういった方法は「使い忘れ」という事態が起きない。ただ不幸(?)なことに自分自身では取り外せない。(普通は。)ちなみに、こういう長期間使える方法をまとめてラーク (LARC=long-acting reversible contraceptives) と呼んだりする。
今回Aさんがどういう理由でMirena を止めたいと思っているかを私は知る由はないが、始めたときはそれが彼女が「ベスト」と選んだ方法であった。中止の理由はなんであれ1年半継続できた、というプラスの面も忘れないでいたい。この間Aさんは高校生活をふつーに続けられていたと思われる。もし仮に不確実な避妊によって妊娠していたら、妊娠を継続するにしてもしないにしても、決断や生活の変化に迫られたろう。
Aさんの Mirena は医療扶助タイプの健康保険でまかなわれていた。 Mirena など LARC の初期費用はピル等と比べると大分高いのだが、彼女が仮に妊娠して医療扶助が彼女の妊婦健診や出産費をカバーしないといけないことと比べたら、 Mirena の価格なんて比較にならんだろう。
もっといえば、Aさんが高校を続けて、願わくば無事に卒業できたら、将来的に医療扶助や生活保護におんぶに抱っこではなく、自分で稼いで生活を支えられる可能性が高まる。つまり、社会保障の恩恵を受ける人というよりは、社会保障に貢献していく社会人になっていける可能性が高まる。
そんなわけで、「Aさんは1年半もMirena を続けられてよかったなー」、と勝手に私はおもうのだ。
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