2014年3月2日日曜日

患者さんのソーシャル・ヒストリー考

患者さんの問診を取るとき、病歴やアレルギー歴など集める情報というのはいろいろある。そのなかでソーシャル・ヒストリーというのは、いってみれば患者さんの暮らしぶりや生活習慣に関する情報である。

暮らしぶりや生活習慣というのは、現時点での病気を治す上で知っておくと役に立つだけでなく、これから先の病気を予防するためのヒントになるのでとても重要だと思っている。なぜかというと、暮らしぶり・生活習慣のなかに「未病」の因子がしばしば垣間みられるから。

ソーシャル・ヒストリーに含まれるものとしては、たとえば喫煙やアルコール・カフェイン摂取の習慣、食習慣、運動習慣、職業、誰とどんなところに住んでいるか、趣味やストレス発散の方法、家族・友達関係、信じている宗教や信条、といったものがある。

問診票から把握できるものもあるけれど、口頭で尋ねないと分からないことも多い。これらすべてを逐一聞き取れているわけではない。診察時間は限られているから、特に重要だと思うことを優先して聞くしかないし、それでよいとおもう。

前の職場では、少なくとも職業については尋ねるように心がけていた。代理教員、オフィスビル清掃員、バーテンダー、ウェイトレス、弁護士、銀行員、ストリッパー、就職活動中、などいろんなバリエーションがあった。それを聞くことで、患者さんの理解が深まった、と言うと自己満足的だが、その方の人となりや行動パターンに「なるほど」、と思えることが多かった。

たとえば美容師さんに、「どうしても昼食が取れないことが多いんや。周りのスタッフは皆休憩時間にタバコを吸うねん。」と言われて、彼女の置かれた環境のなかで生活習慣を変えることの難しさを知った。

身体的な情報だけを記載したカルテだと、24歳Aさんの人物像は体重・身長・BMIそのほか診察所見だけで「のっぺらぼう」な感じだが、カルテの隅に「シングルマザーでコミュニティーカレッジに通いながらサンドウィッチ屋で働いている。」などと走り書きしていたら、1年後でもAさんの顔や話し振りを覚えていられたりする、という副効用もある。

現在の職場では、患者さんはもれなく「学生」である。(笑) バリエーションとしては、専攻は何か、学部か修士か博士過程か、地元出身か遠方出身か、勉強以外のときは何をしているか、アルバイトは何をしているのか、この夏はどう過ごす予定なのか、といったような感じで無限である。これら全部を聞けるわけでも書き留められるわけでもないけど、少なくとも何を専攻しているか、留学生だったらどこの国の出身か、などを電子カルテのフリー記載欄に書くように心がけている。

先入観ばかり持つのはいかんが、同じ年齢であっても、専攻や学年による性格や人柄の「傾向」みたいなものがあって(占いみたい?)、それに合わせた話し振りやアプローチをする必要性を感じている。初診時の問診票の項目に、最初から専攻と現在の学年もデフォルトで入れられるといいな、と思っている。

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