アメリカの医薬品は、食品医薬品局(Food and Drug Administration) という役所が許認可を担当している。さらにそれぞれの健康保険会社は、自分のとこの患者さんに使ってよいと認めた薬についてformulary と呼ばれるいわば薬品リストにまとめている。
したがって、FDAには認可されていても、保険会社の formulary に挙がっていない薬については保険がカバーしないため、患者さんの全額自己負担になってしまう。(もっとも保険がカバーしていたとしても、入っている保険によって自己負担分が発生することは多い。)
formulary になくても診療者が保険会社に pre-aprroval、つまり事前承認をとれば、保険が利く場合もある。
ある患者さんが、Aという経口避妊薬を使っていた。これまではformulary に入っている薬だったので患者さんの自己負担額は問題にならなかったが、最近になってAがformylary から外されてしまった。Aよりも少しホルモン量の多いBという薬なら Walmart で28日分9ドル、この地域のスーパーにある薬局でも13ドル程度で買える。しかし患者さんは飲みなれたAを出来れば続けていきたいということだったので、Pre-approval を試みた。
保険会社に電話して、自動音声の応答メニューをやっと切り抜けたと思ったら、あっちに回され、こっちに回され、最後に「今からファックスで用紙を送るからそれに必要事項を書いて提出してください。」と。その通りやってみたが、その後「認められません」との返事がきた。
というわけで私の努力と時間は水の泡となった。
今回の避妊薬AとBのように、多少の用量の違いのみであれば、高いブランドAをformulary に入れたくないとする保険会社の言い分も分かるし、患者さんの被る不利益も大してない。しかしもっとフクザツな状況のときもあって、そういうときは厄介だ。類似薬を試したけどダメでした、とかいろいろ書いて、それでも認めてくれるかどうかはやってみないと分からない。
pre-approvalという制度そのものにもまして、電話・ファックスなどの一手間(かなり面倒)がかかることで、新薬や高い薬の処方を抑制する効果は結構ありそうだ。
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