先日知り合ったあるNPが、自分の患者さんについて、
"Someone has to take care of these patients."
(だれかがこの患者さんたちを診なあかんのよ。)
と言った。その言葉を最近よく思い出す。
いわゆる1年に1回の診察のことを、annual exam とか、女性患者さんの場合は well-woman exam などと呼ぶ。
健康保険がないと、この手の診察は敷居が高い。診察の重要性はわかっていても、痛くも痒くもないときにわざわざ全額自費で診察を受けようという気になれないのは理解できる。
私の勤めている組織では、州政府などからの委託プログラムが各種ある。それで健康保険がない患者さんにも、年齢・収入・世帯人数などの条件が合えば、無料あるいは低額で診察を提供できる。
本来 well-woman exam に来るのは基本的に健康な人のはず。そして病歴聴取や診察の中から病気を発見したり、今後の病気の予防や健康増進のための働きかけをするわけだ。しかしながら、何年も医療機関から足が遠のいていて、口コミで我がオフィスの情報を聞きつけてやってきた患者さんの場合だと、 超 sick visit と呼びたくなるような健康状態であることも珍しくない。
とはいえ、私のできることには限りがある。というのも委託プログラムは リプロダクティブヘルスあるいは乳がん・子宮がん予防だけに主眼を置いていて、必ずしもプライマリケア領域全域を網羅するものではないからだ。また組織のプロトコルもプライマリケア領域には十分踏み込んでないし、私自身の能力も患者さんの要求にぜんぶ応えられるものではない。
最近は無保険の人を対象にしたプライマリケアの受け皿を近くに見つけ、そこを患者さんに紹介できるようになったので、だいぶ肩の荷がおりた。
診察から長年遠のいていた患者さんの多くは、健康問題以前ににいろいろな社会問題を抱えている。人によってもちろん状況や性格はさまざまだけど、とても言い方のきつい人や要求の多い人も少なくない。(人生のなかで培ってきたスタイルなんだと思うが。)それらを聞き続けると、結構こたえる。
また、英語が母語であるアメリカ人であっても、自分の病歴や今の症状を順序だててわかりやすく語れるとは限らない。例えば言葉を間違って使っていたり、激しい思い込みをしていたり、話が大げさだったりなどいろいろあるので、状況を把握するだけでも一苦労。(そういうことをボスはなかなか分かってくれぬが。)
先のNPの言った、「誰かがやらないかん。」という言葉や、"You can only do what you can do."(決して悪い意味ではなく、出来ることをやるほかないし、やるっきゃないという感じ)で気分を盛りあげる今日この頃。
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