2016年2月19日金曜日

診療側の考えるハイリスクと患者さんの考えるハイリスクのギャップ

小芋の元同僚で他の医療機関で働いているAさんが、「患者さんの苦情がボスに届いたんだ。」と、いつになく落胆していた。患者さん(Bさん)は過去1年に10数人の人と性関係があって、かつ、コンドームの使用は極めて稀だったのだそうだ。それで、Aさんは、Bさんに、クラミジアと淋菌感染症のみならず、HIVと梅毒のスクリーニング検査もしましょうと勧めたのだそうだ。そして、コンドームを毎回確実に使うように、と強く勧めたのだそうだ。

小芋が聞いたら、Aさんのこれらアドバイスは非常にまっとうだ、と思うわけだが、
Bさんは、「Aさんは私をjudge (批判、非難)した。」といって、ボスに苦情を伝えてきたらしい。

Aさんによると、診察中、特にBさんが怒ったり取り乱したりした様子はなかったので、苦情の話がボスから来て、とても面食らったとのこと。

Aさんは、私がこれまで知る医師のなかでも、とりわけピカイチの心と知識を持っていて、小芋なんぞ、Aさんのカルテ記載を読むだけでも、その細やかさに毎度感動した経験を持つ。だから、このような苦情の話に、とても驚く。

さらに大変なのは、ボスが医療者でないということ。これは米国ではよくあることだが。医療者だったら、クリニカル・ジャッジメント(非難というより、これは、判断)的に、Aさんの勧めはいわば当然、と説明するまでもないところだが、共通知識を持っていない人がマネジメントしている場合、いちいち根拠を説明する、なんていう思わぬ手間が発生したりする。

Aさんは、かつて、小芋がかかりつけ医に選びたい!と思ったくらいの人柄なので、早くこの件を卒業して、エネルギーをまた診察のほうに発揮してほしいな、と思う。

同時に、小芋にとっては、診療方針を患者さんといっしょに作っていくプロセス、言葉の選び方について、身の引き締まる思いのするエピソードである。(ベテランのAさんでもこのようなことがあるのなら、小芋はなおさら心しておかねば!、という感じ。)

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