男性同士のセックスやIVドラッグの使用など、いわゆるハイリスク行動をしている(したことのある)人にだけHIV抗体検査をするのではなく、基本的に13歳から64歳までのすべての患者さんに検査をすすめるべし、というCDCの勧告(2006)がある。
その背景には、リスクに基づいた検査だけでは不十分だったという反省と、がんと同様に早い段階で見つければ早く手が打てるということがある。事実、早い時期に見つけて治療した場合は、寿命への影響も非常に小さい。逆にHIV検査がなかなか行われないでいると、AIDSを発症したあとでようやく何かがおかしいといろいろな検査を始めてやっとHIV感染がわかることになり、治療がむずかしくなる。
CDCのこの勧告のなかでは、HIV抗体検査を受けるにあたっての同意書やカウンセリングは必要ない、ということになっているそうな。実は私今この記事で初めて知ったのだが。http://cme.medscape.com/viewarticle/725548
この勧告にもかかわらず、ペンシルバニア州の法律では同意書も検査前後のカウンセリングが必須である。カウンセリングは重要ではあるが、同意書を用意したり患者さんに読んでもらってサインしてもらう作業は、現場ではともすると「やっかいな一手間」ともなりかねない。(少なくともプラス5分かかる。)
Opt-out、つまり基本的に全例に実施し特別な場合のみ行わないという方針を取り入れれば、患者さんにとって「HIV抗体検査を受けるのは誰もがうける普通のこと」と捉えてもらいやすくなるばかりか、スタッフにとってもルーティンのお仕事として協力してもらいやすくなるというメリットもあるように思う。正直に言って、今一緒に働いているスタッフの間では、HIV抗体検査は extra なことという扱い。昼休み直前ともなればスタッフからの無言のプレッシャーを感じながら、笑顔で採血の依頼をしている私。
ドラッグなんてやったことないしー、パートナーとは一対一の性関係で、まったく自分はHIVと無縁よー、と信じて疑わない患者さんにも、「いやちょっと考えてみましょうよ。ほんとうにリスクはまったくないでしょうか? じつは新しくHIV感染がわかった患者さんの中にはあなたのような人も少なくないんです。だからこそHIV抗体検査が広く勧められるようになったんです。」と話を持っていきたい。
こちらのサイトには各州のHIVに関する法律が紹介されている。
http://www.nccc.ucsf.edu/consultation_library/state_hiv_testing_laws/
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