アメリカの医療保険事情がフクザツなのは日本でも知られていると思う。保険と一口に言っても実にいろいろである。公的保険、民間の保険。同じ保険会社でもその中でまたいろいろプランがあるからややこしい!
deductible といって、年間一定額までは保険でカバーされず自己負担になるしくみがある。例えば deductible が500ドルとすると、年間500ドルに達するまでは自己負担、それ以後はあらかじめ決められた何割かが保険でカバーされる。個人で保険に入る場合、月々の保険料が低額なプランを選ぶと、それと引き換えに deductible が高くなる。
若くて元気で病気になる予定(?)もないような人、あるいは deductible 額が低いプランは月々の保険料が高すぎて払えないという人は deductible が高くなっても安い保険料を重視してそういうプランと契約する。
ほんとうは民間保険に入っているのにこのdeductible を払いたくがないために無保険を装って来院し、政府の予算による支援プログラムを利用して診察やマンモグラムをただで受けようとされた患者さんがおられた。「自分は働いているんだ!」と豪語された。
彼女の主張はつまり、自分は働いている=税金を納めて社会に貢献している=当然公的資金の医療を受ける権利がある、というわけである。
不況で州の税収も激減して、それによって州政府のプログラムもいろいろ縮小・削減が続いている。患者さんがこれまで利用してきた某プログラムも、例年よりも対象者を減らさざるを得ない状況。
そんななか、この某プログラムの理念としては無保険の人を優先せねばならない。先の患者さんからすれば、働いていない人が恩恵を受けて、自分が自費で医療を受けなければならないのは納得がいかない、ということになってしまうが、医療の末端のスタッフであるわれわれにはどうすることもできない。就労の有無や無保険にいたる背景にはいろいろな事情があるから、何をもって公平さを保つかはむずかしい。。。
政府の医療改革のすえには、このような話が過去の出来事として語れるだろうか。
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