テレビや新聞でご存知の人も多いと思うが、厚生労働省は先月14日、子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシルとサーバリックス)の接種の推奨を差し控える、でも接種の中止はしないと発表した。これに関して雑感を少し書きたい。
今回推奨中止のきっかけとなった重篤な疼痛が、本当にワクチン接種による者なのかという点がとても気になる。因果関係があったとして、日本人になにか特有の素地があるのか?(同様の問題が他国で起きたとは聞いていないし、また推奨中止をした国も日本だけとのこと。)
と書くと、重篤な副作用を受けている人のことを何も考えていないように思われてしまうかもしれないがそうではない。健康な人が受けるワクチンで重篤な副作用が起きたら、不幸なことこの上ない。
厚生労働省の医薬品・医療機器等安全性情報 No. 302 (2013年5月発行)には3人の症例の概要が書かれている。
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_anzen/file/PMDSI301.pdf#page=28
心配なのは、今回のワクチン推奨中止が、将来において今の風疹のような社会的大問題になるんではないかということ。まれな副作用を恐れるがあまりワクチンを受けない人が増えることで、本来なら救えていたはずのたくさんの命が救えなくなってしまうのではないかということである。
とにかく自然がいちばん、薬もワクチンも一切使わないのがが一番安全と考える人もいるかもしれないが、「利用しないことによるリスク」というのも忘れずに考えないといけないと思うのだ。
これで思い出すのは、昔ある妊娠中の患者さんに薬を飲むことの必要性を説明したときのこと。妊婦さんは、ともすると「薬=危険、よくない」と考えて、一切の薬を飲まなくなってしまうことがある。たしかに、奇形を招く可能性のある薬などもあるので、それらは避けなければならないが、甲状腺の薬、高血圧の薬など、飲まないことで妊婦さん本人ばかりか赤ちゃんまでが大きな危険にさらされてしまうことも少なくない。お腹の赤ちゃんのことを思って「薬を飲むことのリスク」を恐れるがあまり、「飲まないことによるリスク」がすっぽぬけてしまっては危険だ。飲むことと飲まないことのリスクを整理して、「赤ちゃん思いのあなただからこそ、この薬を飲むことは大事なんですよ」ーというメッセージを伝えるのは結構難しかった。
厚生労働省のウェブサイトに、この件に関する一般向けのチラシがある。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/leaflet_h25_6_01.pdf
これをみると、患者さん側にワクチンを受けるか受けないかの判断を丸投げしてしまっている印象を受ける。冷たい印象もなくもない。
今後でてくるであろうさらなる調査結果に注目していきたいが、現時点としては次に挙げる資料が参考になると思う。
日本産婦人科医会の資料 http://www.jaog.or.jp/news/img/cancer_20130624.pdf
子宮頸がん制圧を目指す専門家会議 の資料 http://www.cczeropro.jp/assets/files/20130620ad.pdf
こちらはWHO声明の日本語訳版含め、最新情報がタイムリーに載っていて非常に参考になる。http://www.cczeropro.jp
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