2016年10月1日土曜日

性暴力の「発見」よりも、性暴力があるかも、という「前提」でのケアへ

大学生を対象とした性暴力についての研究発表を聞いていて、いろいろと思うところがあった。

どのくらいの割合の学生がパートナーからの身体的・精神的・性的暴力を受けているか、またキャンパス内・キャンパス外の医療者が暴力のスクリーニングをしている(と学生が報告したか)か、といった研究データ自体には価値がある。表立っていないけど、実際に起こっている深刻な状況を浮かび上がらせるから。こういうデータはいくらあっても困らない。

けれども、そのデータをもとに、だからもっとスクリーニングをやらなければ!、という解釈には子芋は疑問を持つ。

スクリーニング自体は悪いことではないし、それに対応できるリソースも用意しておくべきだが、スクリーニングで「No」と出たら、「あーよかった。」と次の話題に進む、というやり方は限界がある。なんせ、3-4人に一人は何らかの暴力を受けた経験があるのである。スクリーニングで患者さんが「打ち明けた」ら、こう対応、というんではなくて、
打ち明けようが打ち明けまいが、暴力の経験があるかもしれない、という姿勢で望む(trauma-informed care)ほうが現実的である。病気の患者さんの採血をするときだけ手袋をするんじゃなくて、誰の採血をするときも手袋をはめる、ユニバーサルプリコーションと同じような考え方。

それから、杓子定規の「スクリーニングの質問」をするんでなくて、その時のシチュエーションから派生する質問の仕方をするほうが効果的である。(ただし簡単というわけじゃない。)

なんて、偉そうに書いているが、これらは子芋の新発見ではなく、暴力に関する研究者から教わったことである。

スクリーニングして暴力の被害者を見つけよう!という姿勢のかわりにできることはいろいろある。
  • 「残念ながら暴力を経験している女性(男性も)はすごく多い。もしXXさん自身やお友達が何か困った状況にあったら、いつでもここに来てください。ここは安全なところです。」というメッセージを伝える。
  • 「コンドームを使いたいと思っていても、実際の場面で使えなくて困っているという女性は少なくないです。XXさんの場合はいかがですか?」と尋ねたり、そこからパートナーにも気づかれずに使える避妊法の話に持って行ったり(たとえば銅付加IUDで、月経を止めずに避妊できる。性感染症は防げないけれど、少なくとも妊娠は防げる。リスクリダクション。)
  • 主訴がたとえ「転んでヒザ擦りむいた」でも「ケガをして来られる患者さんの中には、パートナーにパンチされたり押し倒されたりしたゆえのケガの方が少なからずいらっしゃいます。」とふってみたり、
  • 主訴が「のどの痛み」でも「のどの痛みで見える患者さんの中には、オーラルセックスでクラミジアに感染した方もいらっしゃいます。」といって、sexual history に話をもっていったり、やり方は無限。

そして、暴力の被害者を見つけ出すというミッションに重きを置かないほうが、不思議なもので、かえって打ち明けられたりする。

「身体的・精神的・性的暴力を受けたことがありますか?」という決まり文句では、そもそも本人が暴力を受けているという認識がないと、「はい」とは答えようがない。多くの人は、自分自身に暴力を受けた経験こそなくても、身近な家族や友達が暴力を受けているのを目撃したり、話に聞いたりしている。ゆえにあるいみ暴力にマヒしている可能性もある。

まとめ:
暴力のスクリーニング重視(早期発見&早期治療みたいな)の姿勢から、暴力が身近にあることを踏まえてのリスクリダクションにシフトしていきませんか、ということ。

スクリーニングの質問に対する「はい・いいえ」では拾いきれないほど巨大な問題に柔軟かつしたたかにタックルするために、クリエイティブな発想をしていきたい。




2016年9月29日木曜日

4年ぶりのNPWHカンファレンス

2010年、そして2012年と2回参加したあと、すっかり足が遠のいていたNPWHのアニュアル・カンファレンスに4年ぶりに戻ってきた! 今回はルイジアナ州ニューオーリンズ!

2年前の11月にリサーチのファンドに応募した。(ファンドを受けるのは6チーム、うち2チームがNPWHカンファレンスに招待されます、という触れ込み。リサーチの内容よりも、カンファレンス招待というところに惹かれて応募。)

本当は去年の8月までに結果をまとめるはずだったけど、
IRB(倫理委員会)の審査に手間取り、また夏休みの到来という不利な状況に陥り、
結局研究の実施は夏休み明けまで持ち越し。
でもって、12月に最終報告書を出して、
その結果が出たのが5月。
晴れて今回のカンファレンスに招待された。

そして、ついに、今日、ポスター発表。わーい!
パワーポイントでの発表は2012年にやったが、今回は初ポスターだった。
いろいろ勝手がわからず、事前の練習をしすぎた。

とまとまん、ポスター作成、箱詰めありがとう。
バスの時刻も調べてくれてありがとう。
聴診器を取りに戻ってくれてありがとう(あるレクチャーの持ち物として今回持ってくるように言われていたが、職場に置いてきてしまい、出発直前に取りに戻った。)

ここまでくるにあたっては、たくさんの人からの励ましと、
思いがけない落とし穴の数々がありましたわ。
最後の課題は、論文にすること。

カンファレンスでたくさんのいいレクチャーを聞けてうれしい。ブログのネタもいっぱい。

2016年9月22日木曜日

クリニックの「出前」に必要なさまざまなロジスティクス

先日小児科に「出前」に行く話を書いた。「出前」とひとことでいっても、普段外来でやっていることを別のクリニックに持っていくには、自分のカラダが行くだけではだめで、いろいろなロジスティクスが伴わないといけない。

前の前の仕事の時、ある私立大学に月1回行ったり、一般産婦人科のクリニックに週1ペースで行ったりしていたので、スーツケースに必要なものを一切合切詰めて渡り歩く、という経験はあるんだが、また改めて同様のことをするとなると、思っていたよりも、あとからあとから難題が持ち上がる。

特に今回は、IUDやインプラント式の避妊薬の処方(処置)もできるようにするのが重要なので、スペキュラムはディスポーザブルのを使うにしても、tenaculum とかring forceps (日本語でどういうのか忘れました)とか、ディスポでは手に入らない道具をどうするか、という課題にぶつかった。滅菌されてパックされた道具を持っていくのは簡単だけど、使用後が問題。

それから、膣分泌物を見るのに使う顕微鏡が小児科にはないので、それを用意してもらったり、部屋の雰囲気はあまり子どもっぽくないように配慮してもらったり、時間帯もティーンが来やすいよう午後ー夕方にしたり、でもその時間帯だけだと部活を休めないティーンには意味がないので、午前中とか土曜日の時間帯も検討したり。

必要なこまごまとしたものを全部持って行っていったつもりでも、まだ漏れているものがあったりして、まだまだ試行錯誤だ。

訪問看護をしているナースたちは、きっとこういう「準備」において優れているに違いない。

2016年9月21日水曜日

Google に birth control と入れて検索すると?

アメリカのGoogle で避妊 "birth control" とか、"IUD"などとキーワードを入れると、右側にサマリーが絵付きで出るようになった。すばらしい!

https://www.google.com/webhp?sourceid=chrome-instant&ion=1&espv=2&ie=UTF-8#q=birth%20control

https://www.google.com/#q=iud

https://www.google.com/webhp?sourceid=chrome-instant&ion=1&espv=2&ie=UTF-8#q=birth+control+shot

https://www.google.com/search?q=implant&oq=implant&aqs=chrome..69i57j0l5.1205j0j9&sourceid=chrome&ie=UTF-8#q=nexplanon

これは、Googleと、National Campaign to Prevent Teen and Unintended Pregnancy というグループの協力によってできたものらしい。

そして、左側に上がってきている検索結果も、Bedsider.org や、YoungWomensHealth.org といった信用できるサイトが上位に来ているので、情報を求めている人に、非常に役立つと思う。

2016年9月20日火曜日

電子カルテで決まる吉凶

アメリカで働き始めて、今で3種類目の電子カルテと格闘している。

昨日書いた出前先の小児科クリニックでもまた別の電子カルテなので、それを入れると4種類目になる。

どの電子カルテでも、一定のルールを満たすように作られているはずであるが、使い勝手、見やすさ、は本当に4種4様である。

個人的な好みNo.1は前職の電子カルテ。まぁ、一番慣れているというのはあるけど、それを除いても、基本的に見たい情報が見やすく手に入るカルテだった。感覚的にクリックすると、たいがい予想通りのアクションが起こる。

好みNo.2は、出前先の小児科クリニックの電子カルテ。これもかなり見やすい。紙のカルテを開くのと同じような感覚で使える。配色を好きなようにできるのも気が利いている。そういう単純なことで、見かけの印象はずいぶん変わるもの。

残念ながら、子芋がメインで現在使っている電子カルテは、涙ものである。
なんでこんなに「分かりにくく」作れるのか、わからん。

少しでもカルテの入力時間を削減すべく、今自分用のテンプレートを作成中であるが、他の人がすでに作っている「お気に入りフレーズ」や「検査セット」が移植できないのが至極残念だ。自分でちまちまと、1個1個作らないといけない。そして作っていても、本当に不親切なカルテなので、気が滅入る。せめて見かけの色をもう少し心ウキウキする配色にしたいが、そういう機能はないようだ。(涙)

電子カルテの選択にあたっては、末端のユーザーに選ばせるのが、スタッフと組織の幸せのためである。




2016年9月19日月曜日

小児科クリニックが思春期の子どもたちをサポートできるように「出前」に行く仕事

先月から始めた新しい仕事、
子芋の大きな役割の一つは、地域の小児科のクリニックが、思春期の子どもたち(若い大人たち)のケアをもっと積極的かつ自信をもって行えるようにするのをサポートすること。

小児科医や小児専門のNPは、ふつうの子ども、特に小さい子どもたちのケアにおいては右に出る者はいない。ところが避妊薬や月経トラブルの話となると、非常に苦手意識を持っていたり、婦人科に紹介しておしまい、という場合も少なくないそうなのだ。

子芋はその反対で、一般的な「子ども」の診方は、今やっているFNPのプログラムでまだまだ修行しないといけないが、避妊カウンセリングや月経にまつわるトラブルの対応は得意である。

というわけで、子芋の役割は、自分の持っている知識や技術を小児科クリニックにいわば「出前」しつつ、クリニックのスタッフ自身でもこれらのケアがふつうのこととしてできるように、じわじわとサポートする、というわけ。

子芋の思春期を思い返してもそうだが、思春期というのは、子どもと大人の見事なミックスした時期だ。中学生ともなると、「小児科」に行くには大きすぎるように感じるし、かといって、おっちゃん・おばちゃんの行く「内科」に行くにも行きづらい、微妙なお年頃である。

そんななか、かかりつけ小児科からは足が遠のき、かといって、新たなかかりつけ医を持つわけでもない、宙ぶらりんのティーネイジャーたち。彼らは高齢者と比べれば、脳卒中やがんといった「大きな病気」にかかるリスクこそ低いけれども、自分の世界を開拓しているなかで、お酒・ドラッグ・タバコ・いじめ・鬱・親の喧嘩や離婚・ピアプレッシャー・デート・セックス・性感染症・妊娠などなどいろいろな関門やリスクと人知れず戦っている。

だから、普段からのかかりつけプロバイダとの関係をもって、カラダやココロの相談をしたり、予防的な対策を身に着けることがだいじ。小さいときからその子を知っている小児科医が、中学・高校の時期も、そして親の健康保険でカバーできる年齢(26歳)までサポートできると、思春期の嵐を乗り越えるにも、さらに心強い。

というわけで、手始めに小児科スタッフに避妊カウンセリングのレクチャーをしたりしてるんであるが、なんせ、レクチャーの経験に乏しいので、非常にぎこちない。前にNP学生向けにやった授業のパワーポイントが役立った。ケーススタディーぽくして、みんなが話しやすいようにしてみたのはよかった。

2016年9月18日日曜日

スウェーデンで活躍するミシガンのタオル

20年前に子芋を預かってくれていたホストファミリーとときどきHangout で話す。ホストファミリーといっても、当時のホストきょうだいたちが、いまやそれぞれ家庭をもってあちこちに住んでいたり、大学に行っていたりするので、Hangout でしゃべるにも、多数の画面が次々に切り替わって忙しい。

今日は、私の前に同じファミリーのところにいたスウェーデンの元留学生Aくんも参加していた。(子芋も一度会ったことがある。)

ホストきょうだいのひとり、Cくんは、今ミシガンに住んでいるが、仕事の面接でGrand Rapids にこの前行ったと言っていた。

で、子芋が、Grand Rapids といえば、Meijer(ミシガン州を中心に展開する大手スーパー) の本社があるところでないの、というと、Aくんが、ちょっと待ってと言ってバスルームに行き、ミシガンの地図が書いてある年季の入ったタオル(1995年購入)を見せて、「これこれ、Grand Rapidsのところには Meijer の絵がかいてあるよ。」と笑いながら見せてくれた。このタオルには、ミシガンの有名な場所の都市名と絵がいろいろ書いてあるんであが、それに載るくらいミシガンの人にとって Meijer は重要ということである。

スウェーデンにもミシガンの分身が生きているようで、おもしろかった。

私の文章能力では、これら一連のエピソードがなぜ、そしてどのように面白かったのか表現できないのが悔しい。