2023年6月18日日曜日

MMRワクチンについての相談を受けて

 職業柄、友人知人から医療に関する相談を受けることがよくある。でも、患者ー医療者関係の成立していない間柄での相談というのは、下手すると仕事の時以上に緊張する。というのも、その方の背景、例えば過去・現在の病気、使用中の薬、家族歴、そういったバックグラウンド情報なしに、ご本人が提示した情報のみでいわば判断が求められるから。これはとても危険。

どんなに気を付けているつもりでも、超重要な情報をご本人は伝えてくれていないかもしれないし、良かれと思って申し上げた一般的情報がその方にはまったく不適切ということもあるわけ。

なので、診察室外での個人的医療相談は一切お断り、とするのも一つの手だとは思う。しかしながら、ナースプラクティショナー、あるいは看護師だと思うと、人と言うのは、いろいろと聞いてみたくなるもんだ、というのもわかる。とはいえ、自分の発言がその相手のみならず、また別の人に伝搬、ときには間違って伝わっていく危険性なんかもある。

先日受けたMMRワクチン(麻疹、おたふく風邪、水痘の3種混合ワクチン)に関する質問に関しては、次のように答えてみた。今でもこれが良かったかどうかは、自分でまた結論がでていない。


どんなに気を付けて書いても、個人個人の皆様には不適切な情報になる場合がございます。この限界をよくご理解の上、参考までにお読みください。もしこれをお読みになった方が私の書いたことを丸呑みして、たとえ不都合が生じましても、各々のみなさまの健康状態を存じ上げない私としましては責任をとれません。ご質問はご自身のPCP(かかりつけ医)にぜひお願いいたします。

麻疹単独のワクチンは現在米国には存在しません。https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/vaccines-list.html
MMRは成人が受けても問題ありません。ただし、MMRは生ワクチンですので、ご妊娠中の方や、免疫不全の方には不適切です。また、これから妊娠を希望されている方にとって、ご自身のためのみならず赤ちゃんのためにもMMRの免疫があることは非常に重要ですが、ワクチンを受けた時にうっかり妊娠しているとよろしくないですので、月経周期のどのタイミングでワクチンを受けるかなど、詳細はPCPや薬剤師にご相談ください。また、ワクチン接種後少なくとも4週間は妊娠を避ける必要があります。2回接種する場合は1回目と2回目を4週間空けないといけませんので、合計で少なくとも8週間の避妊が必要となります。
また、MMRV (麻疹、おたふく風邪、風疹、水痘)の4種混合は2歳から12歳までのみが対象ですので、大人には不適切です。

1回接種でもかなり免疫は期待できるのですが、2回接種したほうが、より大多数の人に免疫が付くので、
米国では1歳で1回目、4-5歳で2回目を受けるのが一般的なスケジュールになっています。
しかし、2回受けても免疫のつかなかった人がたまにいます。(これがまさに、大多数の人がワクチンを受けないと”群れ”全体が守れない理由です。)

一般の大人でMMR接種歴の証拠のない方は、MMR1回接種をすることが勧められています。
大学生、海外旅行する人、医療従事者などには2回接種が勧められています。過去に1回接種した方の場合は、追加の接種を1回すればOKです。

過去子どもの時分にMeasles (麻疹=はしか) だけとか、MR(麻疹と風疹)の2種混合だけを受けた成人が、米国でMMR を追加で受けてもなんら問題はありません。(繰り返しますが、生ワクチンですので、免疫不全の方や妊娠中の方には不適切です。
また、予防接種歴を無くしてしまった方が、仮に3回目や4回目のMMRを受けたとしても、特に問題はなく、
むしろ生涯免疫の可能性が高まるわけなので、とくにお子さんやお孫さんなどと触れ合う方には、
確実にワクチンを受けておくに越したことはありません。

MMRについてのCDCの解説の日本語版のリンクはこちらです。

ワクチンを受ける場所ですが、PCPのオフィスのほか、薬局でも受けられます。
アメリカの医療保険に入っている場合、多くの予防注射は予防医療の観点から費用の患者負担が不要のことが多いですが、
海外旅行保険で来られていたり、現時点で医療保険がない方は、自費でカウンティのImmunization Clinic を利用するのも一つです。
費用のリストも明瞭です。

小児および25歳まで(26歳未満)の方でしたら、Ronald McDonald Care Mobile でワクチン接種をすることも可能です。(無料)MMRに限らず。

患者ー医療者関係のないところでの医療助言の限界について、ご理解いただければ幸いです。
そして、ご自身のPCPをこういった質問を気軽に投げられるリソースとして、ぜひご活用ください。

 


以上。最後の、質問を気軽に投げかけられるリソースとして、PCP(かかりつけ医)を利用するというのが特に重要。そして、まだPCPがいないニューカマーの人たちに対して、PCPとの関係を作れるようにサポートするのがまた重要。

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