ラベル 暴力 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 暴力 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2014年10月21日火曜日

性暴力の報告用紙

大学キャンパス内および周辺で起きた種々の犯罪を、大学に報告する専用の報告用紙がある。窃盗、薬物乱用、未成年のアルコール摂取、ストーキングなどのほか、強姦や強姦未遂などの性的暴力、デートレイプ、などもこの報告用紙の対象である。

加害者が見ず知らずの人か、知り合いか、交際相手かなどは関係ない。犯罪は犯罪。

事件の概要(分かる範囲で場所も)については簡単に書くが、学生の名前などの個人情報は書かない。

この秋、性暴力の被害にあった患者さんと出会うことが増えて、この報告書をしょっちゅう書いている。この秋特別に性被害が増えた訳ではなくて、多分最近の小芋の尋ね方の何かが、患者さんに以前よりも話させているのだと思う。

毎年の犯罪統計にあがってくる性暴力の件数は、あくまで報告のあった件数に過ぎないので、多分実際の数と比べると氷山の一角。ただし、同じ学生が、クリニックで小芋に相談し、また別のところで教授なり寮の職員に相談したりして、それぞれの職員がみな報告書を書いた場合は、報告の重複がありうる。

ゆえに「正確な」統計というのは無理だが、大学側も、学生も、職員も、性暴力の頻度の多さをもっともっと把握するようになってほしいという思いで、今日も報告書を書いた。

2014年9月27日土曜日

性被害のよくあるパターン

「アパート(あるいはバー等もあり)で飲んで、盛り上がって、その日その場で知り合った人(もしくは知り合い)と話しているうちに仲良くなって、体を触れ合ったりして、そこまでは同意の上だったが、そこから先、服を脱いだりセックスする気は全くなかったのに相手に強行され、レイプもしくは性的暴行という事態にまでいたった。」

と、クリアに覚えていて話せる患者さんはまだよいのだ。

酔いすぎていて、何をされたか記憶になく、でも裸で目覚めたことからすると、レイプされたと思わざるを得ない、とか、相手の顔や名前も定かに思い出せない、といったことも珍しくない。

警察にすでに届けました、という患者さんは少なく、届け出るように強く進めても、ためらう患者さんが多い。

いま、米国中で、性被害に対する政府や大学の取り組みが盛んになってきている。とはいえ、警察や大学が把握している性被害件数は氷山の極めて一角だろう。

小芋は性被害がすでに起きてしまった後の対応を精一杯しているが、無力感というか、自分が出来ることの限界を強く感じるところでもある。

2012年12月11日火曜日

セーフティー・カード

Intimate Partner Violence、いわゆる配偶者やパートナーからの身体的・精神的・性的暴力に遭っている人はとても多い。患者さんのhistory を伺う一環で、IPVのスクリーニングをすることはすでに一般的だとは思うが、患者さんが必ず打ち明けてくれるわけではないし、そもそも自分の状況を問題とも思っていないようなことも少なくない。また医療者側の質問の仕方が悪いと本来出てくるべき回答も出なくなる。(最悪の聞き方:「あなた、ドメスティックバイオレンスの経験なんてないわよね。ね、そうでしょ。」)

現在うちのオフィスでは、この冊子の21-22 ページにある載っているカードを患者さんに渡すようにしている。ジャバラ式に折ってあって、折ってあるときは名刺サイズ。オフィス内では safety card と呼んでいる。
http://www.futureswithoutviolence.org/userfiles/file/HealthCare/reproguidelines_low_res_FINAL.pdf

上記リンク先には、このカードを患者さんに渡すときの話の振り方、患者さんからぽろりと言葉が出てきたときの対応の仕方なども事細かに書いてあるので、興味のある人にはとても参考になると思う。

パートナーや配偶者との関係は、よきにつけ悪しきにつけ、健康に多大な影響をおよぼす。性感染症もしかり、妊娠もしかり。そして、最悪の場合は死に至る。ある患者さんはボーイフレンドにgun で打たれて亡くなった。とても明るいすてきな女性だった。

医療現場でできることに限りはあるのは承知のうえで、ひきつづき一人一人の患者さんにメッセージを送りつづけたい。

2011年11月30日水曜日

パートナーからの暴力とリプロ・ヘルスの深い関係

今日は午前中いっぱい使って、intimate partner violence, 恋人や配偶者からの暴力) と reproductive coercion (セックスや生殖に関する支配、支配力)の影響について学んだ。

というのも、とある研究グループが IPV/RC に関する介入研究をしていて、 わがオフィスが「介入群」のひとつに選ばれたのである。「介入」の手始めとして、スタッフ全員がトレーニングを受ける機会に恵まれた。

これまでIPVに関しては、NPプログラムでも、その後就職してからの研修でも学ぶ機会がちょこちょこあったが、今日のトレーニングは目からうろこ、あぁ今日まで生きててよかった、というような内容だった。

従来私が学んでいたのは、IPVとはなにか、IPVの頻度がいかに多いか、そしてスクリーニングの質問をルチーンで尋ねることがいかに大事か、もしIPVの存在が明らかになったらどうリソースにつなげるか、というような感じ。

しかし今回の主眼はIPV/RCを「見つけて援助につなげること」ではなかった。むしろ、IPV/RCを背景にしてしばしば望まない妊娠をしたり性感染症にかかったりする事実を踏まえ、患者さんがリスクを少しでも下げられるようなオプションを提示し、クライアントと方向性を探っていく、ということに重点があった。

いままでだって、IPVが性の健康に大きな影響を及ぼすことは心得ていたが、今日のトレーニングによって、IPV/RCと性の健康の関係が自分のなかでもっとつながって、カウンセリングをより意義のあるものに再構築できそうな気がした。

まだ言葉でうまくまとまらないけど、ともかく、今日のトレーニングは今までのいろいろなトレーニングの中でもピカイチであった。

2009年11月23日月曜日

パートナーからの暴力に関するトレーニング

Intimate Partner Violence(パートナーや親しい人からの暴力)に関するトレーニングを1日かけて受けた。講師は、隣接する郡にあるIPV支援団体の人2人だった。普段からIPVの被害者のカウンセリングや、IPV予防のための教育活動にかかわっている人たちだけに、非常に引き込まれる話だった。

私にとってとても衝撃的だったのは、Teen Dating Violence の現状。実に、3人に1人が、身体的暴力、性的暴力、あるいは身体的暴力の脅し(threat)を受けているらしい。

technology abuse が非常に大きな問題になってきているという。Technology abuse というのは、たとえば携帯電話で相手がどこにいるかを執拗にチェックしたり、頻繁に(真夜中も!)メールを送り続けたり、携帯電話やデジカメで撮った写真(裸とか)をばらすぞ!と脅したり、など、携帯電話やメールなどの最近の技術を濫用するタイプの暴力。

いわゆる殴る・蹴るタイプの暴力でなくても、パワーとコントロールをにぎる構造はみんな一緒。見たビデオには、女性側が、男性に対して服装にけちをつけたり、事細かに指示をしている様子なども例として出ていた。

IPVをスクリーニングするにあたって、質問をする前の前置きとなるセンテンスの重要性も再認識した。例えば、「驚かれるかもしれませんが、暴力を受けている患者さんが珍しくありません。暴力は女性の健康に非常に大きな影響を及ぼします。なので、私は患者さんみなさんに暴力についてお尋ねするようにしているんです。」といったヒトコトを言った上で、具体的な質問をするのだ。

こちらはたまたまGoogleして見つけた紙一枚のパンフレットだが、どういう風にIPVについて話を持ち出し、スクリーニングするかについて参考になる。具体的セリフが載っているので、とっつきやすい。
http://www.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/csi/ipv-pocket-guide.pdf

2009年3月2日月曜日

パートナーによる暴力

暴力を経験する女性はとても多いので、すべての患者さんに私は尋ねるようにしているんですが、 
Since violence is so common, I ask all women if she has experienced violence.
と口火を切って、

お家にいるとき、またパートナーと一緒にいるとき、あなたは身体的にも精神的にも安全ですか?  
Are you physically and emotionally safe at home and with your partner? 
と質問する。

は? 何を聞いてるん? という感じの反応のときはおおよそ問題ないだろう。

より具体的には、
これまでの交際関係で、殴られたり、蹴られたり、首を絞められたり、そのほかの方法で苦痛を与えられるような経験はありますか。 
Have you ever been in a relationship where you have been punched, kicked, choked or hurt in any way?
とダイレクトに聞く。

だれかに不適切に触られたり、セックスを強要されたことはありますか? 
Has anybody ever touched you inappropriately or forced you to have sex?

という質問に対し首を横に振りはじめた患者さんに、as child? 子どもの時は? と加えて尋ねると、実は・・と話が出てくることもよくある。

親しいパートナーからの暴力、intimate partner violence について尋ねたか、その結果はどうだったかをカルテに記録することは、大事なルティーン項目のひとつとされている。(だから聞くってわけじゃないけれど。)簡単なスクリーニングの質問で、あまりに"yes" という答えが多いのは、非常に悲しい。

患者さんが未成年で、かつ加害者が親などの保護者の場合、医療者には通報の義務があるが、すでに成人だったり、未成年でも保護者以外が加害者だった場合には、患者さんが希望した場合のみ、関連機関につなぐことになっている。たとえずっと以前の経験だったとしても、専門家のカウンセリングを通してケアを受けることが望ましい、とティーナはいうけれども、実際は、「別に今さらいいです。」と話す患者さんも少なくない。ごく最近の出来事であっても、「私は警察も信用してないし、行動を起こすことが余計に事態をややこしくするから、何もしなくない。」と言う患者さんもおられる。

患者さんに自ら質問をしたからには、その回答を受け止めるのもまた自分。非常にセンシティブで重い問題。暴力の経験「あり・なし」の単純なチェックでは済まされない。他のリソースにつなぐかどうかは別として、その場でひと通りの話の区切りをつけなくてはいけない。「打ち明けてくれてありがとう。あなたはひとりではないですよ。」から入って、選択肢の提案etc.

決して興味本位で尋ねているのではなく、暴力は人間の健康に多大な影響を与えるので敢えてお聞きするのですーーという真意が患者さんに伝わるように、そして質問したことがよりプラスの方向に向かうきっかけになるようにもっていきたいーーーそう思っているけど、どこまで出来ているか。

「パートナーが浮気して、彼(彼女)から性感染症をうつされるのも、立派な暴力よ。」とティーナ。本日の名言。